サステナビリティ

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人材育成

サステナビリティ

  • 4 質の高い教育をみんなに
  • 8 働きがいも経済成長も
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 12 つくる責任つかう責任

人材開発の基本方針

従業員の多様性と個性を尊重し、優れた価値を提供できるグローバルな人材を育成

ブラザーグループは「自律型社員の育成」を人材開発の基本方針としており、従業員一人ひとりが、ビジョンを理解し、共感し、自ら行動に移し、結果を出すことができる姿を目指しています。
会社と従業員の関係は「ブラザーグループ グローバル憲章」の「従業員」の項目に示しているように

  1. 従業員の持つ多様性の尊重
  2. 従業員による、さまざまな能力の発揮
  3. チャレンジングな仕事の提供

を重視しています。そして各国、各地域、各事業に則した人材育成と関連制度の充実を図ることが、従業員の長期にわたる才能・スキルの発揮に結びつくと考え、育成環境の整備とさまざまな制度を構築しています。近年、グローバル化はもとより、在宅勤務の拡大、ライフスタイルの多様化など、従業員を取り巻く環境が大きく変化している中、従業員エンゲージメント*1の向上に向けて、会社と従業員がともに成長することが重要だと考えています。そして、従業員が自らの生産性と創造性を高め続けられるように、DE&I*2を推進します。加えて、従業員の真の自律の支援、産業用領域やDXを担う人材育成・リスキリング*3の強化、一人ひとりが活躍できる風土の醸成などにより、従業員のチャレンジ行動を促進していきます。

  1. 従業員と会社が相互に対等で、互いに価値を提供しあう関係のこと
  2. Diversity, Equity & Inclusion(多様性・公平性・包括性)の略。人々の多様性や公平性を尊重し、それらを包摂することで組織や社会としてより多様な価値観を促すことを推進するという考え方のこと
  3. 職業能力の再開発、再教育のこと

人材育成の考え方

ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)では、人材育成の基本は、職場での多様な業務経験やローテーションを中心に、主体的に自ら学ぶということだと考えています。業務経験を通じて学ぶことで、自らの具体的な経験を振り返り、そこで得られた教訓を次に活かすことで、より学びを深めて、行動の定着につなげます。
また、経験の振り返りには、上司や同僚からのフィードバックが不可欠で、そのために定期的なキャリア面談やキャリア開発計画を実施することを重要視しています。

目標管理制度

ブラザー工業では、人事の評価制度の一つとして「目標チャレンジ制度」を導入しています。この制度では、まず期首に、部下は上司と面談を行い、部門と上司の方針を確認したうえでチャレンジ目標をいくつか設定します。その際には、自分のキャリア開発計画も立て、上司もそれに対してどのように関わっていくのかも面談で確認します。そして、期末には、実績面談を行い、チャレンジ目標がどの程度達成できたかを確認します。評価が決まると、フィードバック面談を行い、上司からの説明などを通してその評価に至った理由を明確にし、翌年度の目標設定につなげます。また、評価結果は賞与に反映されます。このようなオープンな制度によって、部下と上司が互いの納得性を高めながら一人一人のレベルアップを図り、それが会社の発展にも大きく貢献すると考えています。

教育体系・研修内容

ブラザー工業における人材育成の取り組みの一環として、節目の年齢でこれまでの経験や環境変化などを振り返り、なりたい姿を描くキャリアデザインプログラムや、必要なスキルが身につけられるよう希望者が参加できる公開研修、若手従業員を対象に早期に海外で経験を積むトレーニー派遣などの実施や、自己啓発の機会としてe-ラーニングを提供しています。また、新任の管理職(上級職)向けには、「ブラザーグループ グローバル憲章」の行動規範に定めている「個人に対する信義と尊敬」「順法精神・倫理観」の意義を掘り下げながら、実例をもとにしたケーススタディーを行う各種ハラスメントや人権など20以上のプログラムを用意し、毎年50人以上が受講しています。ほかにも、日本では2017年度から上司と部下が1対1で対話を行う1on1の取り組みを開始しました。従業員の成長促進を目的として導入し、従業員の8割が実施しています。

2021年度は、ハラスメント防止に対する取り組みを強化しました。まず、ハラスメントを取り巻く環境や基本的な知識を体系的に学ぶため、全ての従業員に対してハラスメント防止e-ラーニングを行いました。次に、「ブラザーは、ハラスメントを決して許さない」をスローガンに、ハラスメント防止における責任や役割を再認識するため、経営層向けと管理職向けに分けてハラスメント防止研修を実施しました。経営層向けには「『関係の質』の視点を高め、聴きあう経営および組織づくりを考える」をテーマとして意見交換を含めた勉強会を1時間行いました。管理職向けには、「NGトークからOKトークへ」をテーマとする1.5時間の研修が実施され、マネジメント力を高めることがハラスメント防止につながるとして、日頃のマネジメントや部下とのコミュニケーションの状況を振り返りました。また、他部門に所属する管理職の取り組みを知ることで、ハラスメント防止についてさらに理解を深めました。
ほかにも、管理監督職以上の従業員を対象として2020年度からワークショップ形式のハラスメント防止研修を実施しています。2021年度は、「対話のある風通しの良い職場を目指して」と題した研修が1回1.5時間で6回に分けて行われ、183人が受講しました。受講者は、ケーススタディーによるディスカッションを通じて職場での行動を振り返りました。
今後も、「ハラスメントのない職場づくり」を目指した取り組みを継続的に行っていきます。

従業員の能力開発に関する研修・教育の実績

従業員の能力開発に関する研修・教育*1の実績(ブラザー工業)
2019年度 2020年度 2021年度
総時間 99,667時間 104,758時間 104,450時間
従業員一人における平均金額 80,043円 49,226円 52,220円
従業員一人における平均日数 1.09日 1.15日 1.13日
従業員一人における平均時間 26.23時間 27.55時間 27.01時間
研修の種類 階層別研修、新任管理職研修、公開研修など 階層別研修、新任管理職研修、公開研修など*2 階層別研修、新任管理職研修、公開研修など*2
  1. 人事部、製造企画部主催の研修のみ。介護関連セミナー分を追加して再集計
  2. オンラインセミナーを中心に実施。トレーニー制度、新人海外研修については中止。

グローバルな課題に対応できる人材を育成

さまざまな経験によって、広い視野と高い専門性を得る

ブラザーグループは、広い視野と高い専門性を持ち、グローバルな課題に対応できる人材を育成するため、ブラザー工業と海外のグループ会社の間で人材を派遣する研修「トレーニー制度」を2008年度から実施しています。
この研修は、人材育成計画に基づいて選出された若手の従業員が対象で、派遣期間は3カ月から2年とし、派遣元と派遣先で事前に立案した研修計画にそったOJT(On the Job Training)を行います。トレーニー制度の開始当初は自身の専門業務に関係する研修が中心でしたが、2015年度からは、開発者が営業担当者と一緒にお客様を訪問し、ニーズや使用状況をお客様から直接聞くなど、専門性とは異なる経験を通じて新たな知見を得る研修も実施しています。また、2018年度からは、20代の技術者が1カ月間、海外の生産・修理現場で学ぶ短期派遣も開始しました。

開発者や技術者が普段の担当範囲とは異なる業務を学ぶことで、お客様のもとへ優れた価値をお届けするブラザー独自のマネジメントシステムである「ブラザー・バリュー・チェーン・マネジメント」(BVCM)を推進できる人材の育成を強化しています。
2020年度は新型コロナウイルスの影響で中断しましたが、2019年度には、ブラザー工業からドイツやインドネシアなどのグループ会社に37人、フィリピンや中国にあるグループ会社からブラザー工業に14人の従業員を派遣しました。ブラザー工業入社12年目のある製造技能者は、中国西安市にあるマシナリー事業の生産拠点である兄弟機械(西安)有限公司に派遣されました。現地の作業者と一緒に、作業一つ一つを丁寧に確認することで、測定した数値や工程全体にかかる時間の見直しや削減など、日本で再現できない事象を、実際の現場で体現できました。

兄弟機械(西安)有限公司での作業確認 兄弟機械(西安)有限公司での作業確認

ブラザーグループは、これからも優れた価値を提供できるグローバルな人材の育成に取り組んでいきます。

ブラザー工業株式会社 マシナリー事業 製造部 沖田 一

トレーニー研修参加者の声
~事業全体へ貢献できるグローバル人材へ成長する~

ブラザー工業株式会社 マシナリー事業 製造部
沖田 一

私は3カ月間、西安の生産拠点において工程削減を目指し、現地スタッフと一丸となって改善活動を行いました。自ら積極的に発言を行うことはもちろん、スタッフとはデータや伝わりやすい言葉を使いながら意思疎通が円滑に取れるよう努めました。こうした現地だからこそ実現できたスタッフとの連携により、日本と中国における生産現場の違いを認識し、生産工程の見える化やタスク管理、手順書の作成による教育を実現することができました。
今後も、部門間や拠点間の連携強化を意識しながら、お客様にとって安心・安全で満足していただける製品をお届けすることができるよう、改善活動や現地スタッフの人材育成に取り組んでいきたいと思います。

AI人材の育成

AIを主体的に活用できる人材育成の推進 「AI活用プロジェクト」

ブラザー工業では、2018年に社長直轄で「業務効率化プロジェクト」を立ち上げ、RPA*1やAI(人工知能)などのIT活用による定型業務の自動化・効率化を全社的に推進しています。その取り組みの一つである「AI活用プロジェクト」では、「AI Everywhere.」を合言葉に、ソフトウェア開発部門が中心となり、従業員一人一人が主体的にAIを活用できるよう支援しています。このプロジェクトでは、自社で独自にカリキュラムを作成した社内AI研修の実施や、専用イントラサイトによる最新のAI技術や社内でのAI活用事例の共有、現場における課題解決のためのAI活用支援など、幅広く取り組んでいます。

専用イントラサイト トップ画面 専用イントラサイト トップ画面

社内AI研修では、「各部門に1名以上AI人材を配置する」との目標のもと、所属部署や基礎知識の有無を問わず参加できる初心者向けのプログラミング講座も設けています。受講者からは「何も分からなかったAIの活用方法を知るきっかけとなるよい研修だった」「演習で実際にプログラミングを体験することで、自分が取り組む際のイメージができたのは良かった」と好評で、実際に受講終了者による各現場でのAI活用も着実に広がっています。

また、製造現場におけるAI活用事例として、インクジェットプリンターヘッドのノズル穴形状確認作業の無人化・検査精度の高度化や、工業用ミシンの出荷前検査の自動化などを実現しました。プロジェクトメンバーが、課題の明確化、AIシステム活用のための膨大なデータ収集と学習作業、システムの試験運用などを各部門の検査担当者とともに取り組むことで、検査担当者はAI知識を深められ、製造現場でのAI活用につながりました。

2021年度には、執行役員が参加する会議にて、「AI Lean Canvas」を利用して、経営層へAI活用について共有しました。「AI Lean Canvas」とは、現状の課題解決に向けて行いたいことがAI向きか否かをA4用紙1枚、1時間で迅速かつ俯瞰的に判断できる有用なフレームワークで、AIの初学者でも簡単に記述をすることができます。この「AI Lean Canvas」の活用により、案件がAI向きかを担当者のAI習熟度に関わらず簡単に判断でき、実証実験および実装へと迅速に移行できるようになりました。

ブラザーグループは、世界的なDX*2が加速する中、社内でより多くのAI活用人材を育てることによって、市場における会社の競争力をより高めると同時に、能力向上による個人の成長に貢献できるよう、今後もIT教育に積極的に取り組んでいきます。

  1. Robotic Process Automationの略。事務業務のロボットによる自動化。(ルーティン化できる複数のアプリケーション操作を人に代わってロボットが実施)
  2. デジタルトランスフォーメーションの略。高速インターネットやクラウドサービス、AI(人工知能)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活の質を高めていくこと。

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