ブラザーグループ健康経営理念の策定と推進体制
ブラザーグループ健康経営理念
ブラザーグループは、モノ創りを通して優れた価値を創造し、世界中のお客様に製品やサービスを提供するため、すべての従業員がグローバルに日々活動しています。
その活動の礎である「ブラザーグループ グローバル憲章」に示されているように、従業員が長期にわたり才能とスキルを発揮するためには、一人ひとりの健康管理が重要であると考えています。
ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)は2016年9月に、「ブラザーグループ 健康経営理念」を策定し、最高健康責任者(CHO: Chief Health Officer)のもと、さまざまな活動に戦略的に取り組んでいます。
また、理念策定後、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行を経験し、健康的に働くことができる大切さを再認識したことから、2024年度に健康経営理念を見直しました。
ブラザーグループは、心身ともに健康で仕事への喜びや幸福に満ちた状態であるウェルビーイングを重視した健康経営に戦略的に取り組みます。
従業員一人ひとりのウェルビーイングは重要な経営資本であり、さまざまな能力を発揮していきいきと働くことが、グループ全体の成長と変革につながると信じています。
ブラザーグループは、これからも"At your side."の精神で健康経営に取り組み、お客様と地域社会への貢献、さらには持続的な社会の発展をグローバルな視野で目指していきます。
ブラザー工業株式会社
代表取締役社長
最高健康責任者
池田 和史
健康経営推進体制
ブラザー工業は、ブラザーグループ従業員の健康管理やメンタルヘルス対策、健康づくりを推進する健康管理センターを設置し、健康保険組合保健推進センターと一体となり、PDCAサイクルを回して、効果的・効率的な従業員の健康の保持・増進活動を展開しています。ブラザーグループの海外の生産拠点では、医師を配置もしくは医療機関と提携し、従業員の心身の健康の保持・増進に取り組んでいます。
ブラザーグループ健康経営推進体制図
ブラザーグループ健康経営推進協議会
ブラザー工業および国内のグループ会社の安全衛生担当責任者が年1回集まり*、従業員の健康に関する課題を抽出し、次年度以降の活動方針や目標を決定しています。また、健康保険組合と優れた活動を展開したグループ会社が活動事例の発表を行い、効果的・効率的な取り組みについて情報を共有しています。
2018年度からは、健康経営への取り組みを総合的に評価し、優秀であった会社をCHOが「ヘルシーカンパニー」として表彰しています。
- 2020、2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一部を除いてオンラインを活用。2022年度以降は対面で実施
健康支援ミーティング
ブラザーグループ健康経営推進協議会で決定した方針に従い、ブラザー工業健康管理センターと健康保険組合の保健推進センターおよびブラザー記念病院が連携し、目標達成のための具体的な活動内容を決め、実施方法の検討とその結果の評価を行っています。また、労働組合と協働したイベントも企画しています。このミーティングには、健康管理センターのセンター長、産業医、保健師、健康保険組合の常務理事、保健推進センターのセンター長などが参加しています。
健康関連データ
従業員の健康に関する長期目標「健康ブラザー2025」
ブラザーグループ健康経営推進協議会では、健康経営理念に基づき、2025年までに達成すべき長期目標「健康ブラザー2025」を定めています。
「健康ブラザー2025」の達成に向け、安全衛生法令の順守をベースとして、従業員が「明るく・楽しく・元気に日々過ごすこと」「自発的に健康づくりに取り組むこと」「仕事と健康を両立すること」を柱に活動を推進しています。
従業員の健康管理データ
主な取り組み
健康経営戦略マップの作成
ブラザー工業は、健康経営で解決したい課題とその解決に向けた取り組みなど一連の流れを可視化するために、戦略マップを作成しています。
健康の保持・増進への活動
メンタルヘルス対策
ブラザー工業は、自らストレスに気づき適切な対処ができること(一次予防)、上司が部下の不調を早期に発見し対応ができること(二次予防)を目指して、2007年から従業員に対するメンタルヘルス教育を継続的に行っています。また、病気を発症した後も自分らしく働き続けることができるよう、復職支援(三次予防)にも各職場と協力し取り組んでいます。
メンタルヘルス教育は、全従業員を対象としたセルフケア講習を5年ごとに、管理職を対象としたラインケア教育を3年ごとに実施しています。2022年度からのセルフケア講習では、病気を予防するためのセルフケア方法としてレジリエンス*1の高め方を紹介しています。
また、2022年度からは、ストレスチェック後の職場改善活動の一環として、部門長を対象としたワークショップを開催しています。このワークショップでは、自部門の強みを把握しマネジメントに生かしてもらうため、ポジティブメンタルヘルス*2に関する講義とケーススタディーを行い、各部門におけるアクションプランを策定します。参加した部門長からは、「部門長同士の意見交換の中で、新しい気づきを得られた」という声がありました。
- 心理学用語で精神的な「回復力」「弾性」「しなやかさ」を意味する言葉で、精神的に疲れる体験や、気分が落ち込んだ時など、困難をしなやかに乗り越え回復する力
- 働く人々の心身の健康度を高め、生産性の向上につなげることを目指す概念。従来の「メンタルヘルス」は不調をいかに防ぐか、不調者にどう対応するかに注力していたのに対し、「ポジティブメンタルヘルス」は個人の成長や幸福感などを重視する
エイジマネジメント対策
ブラザー工業は、従業員が年齢にかかわらずいつまでもいきいきと働くことができるよう、エイジマネジメント対策を推進しています。エイジマネジメントとは、加齢と健康に関する課題に対し、世代ごとの特徴に合わせた産業保健活動を行うことです。2022年度には、各年代の目指す姿を示した「ブラザー生涯健康づくりモデル」を作成しました。本モデルに沿った活動により、働くことでさらに健康になることを目指しています。
2023年度は、忙しい30・40代の運動不足解消を目的とした「運動継続プログラム」を実施しました。この取り組みでは、昼休みの10分間の運動をメインに、「リフレッシュヨガ」「ゆるい筋トレ」の2つのプログラムが実施され、計112人の従業員が参加しました。
睡眠衛生教育
ブラザー工業は、メンタルヘルス対策、事故や労災の予防、生活習慣病の予防、労働生産性の向上を目指して、2018年度から睡眠衛生教育を実施しています。2023年度は、睡眠衛生に関する従業員調査を実施し、良い睡眠につながる成分を含む食事を意識的にとれていないことがわかりました。この結果をふまえ、「睡眠と食事」をテーマとした健康教室を全30教室開催し、1,686人の従業員が参加しました。
女性の健康管理
ブラザー工業は、多様性の尊重に向けて、女性のさらなる活躍を健康面からも支援したいという思いから、女性の健康管理に戦略的に取り組んでいます。例えば、女性特有の病気に関する知識の向上を目的に、毎年「女性セミナー」を開催しています。2023年度は「子宮頸がんセミナー」と「PMS・更年期障害セミナー」を開催し、男性従業員を含む計783人が参加しました。また、女性専用の健康相談窓口も開設しています。
治療と仕事の両立支援
ブラザー工業は、健康管理センター設立当初の2006年から、治療と仕事の両立の支援を行っており、従業員本人、家族、職場、人事部、主治医などと連携して治療と仕事の両立ができる環境を整えています。2017年には「治療と仕事の両立支援ガイドライン」を作成し、イントラネットで共有しました。2022年度からは、両立支援活動の一環として「社内ピアサポート活動*」を開始しました。本活動では、治療と仕事の両立が必要なブラザーグループの従業員が同じような立場の仲間とつながることで、心のよりどころをつくり安心して働くことができるよう、座談会や相談会などの場を提供しています。この活動を通じて、「社内で同じ境遇の人と支え合える場をつくること」「社内で治療と仕事を両立している人の存在を知ること」「病気になっても働き続けられること」「治療と仕事の両立について上司や同僚から理解や協力が得られ、支え合える職場環境につなげること」を目指しています。
2024年3月現在、ブラザーグループ内の治療中または治療を経験した従業員34人が参加しています。また、研修を受講し、サポーターとして認定された15人の従業員は、自身の体験談を伝えたりするなどの支援活動を行っています。
- 同じ課題を持つ人が自身の体験や行動、考えなどを披露し、互いに語り合うことにより支え合い助け合うこと
禁煙支援
ブラザー工業は、健康被害の低減に向けて、従業員に対する禁煙支援を積極的に行っています。
2023年4月には、喫煙者への禁煙支援と、非喫煙者の受動喫煙から生じる健康への悪影響低減を目的に、「敷地内全面禁煙化」を施行しました。敷地内での禁煙化に加えて、喫煙者への禁煙サポートも引き続き実施しており、2023年度は18人の従業員に対してアプリを活用した禁煙サポートを行いました。
健康に関するそのほかの取り組み
従業員の健康をサポートするために、そのほかにもさまざまな取り組みを行っています。
2023年度の取り組み | 内容 |
---|---|
がん対策 | がんに関するリテラシー向上を目指す「e-ラーニング」を実施 |
糖尿病重症化予防対策 | 24時間持続血糖測定器を使った個別指導(HbA1c*17.5以上の従業員対象) |
生活習慣病予防対策 | 3カ月の集団ダイエットプログラム(BMI30以上の従業員対象) |
ヘルスリテラシーの向上 | 「ブレスロー7つの健康習慣*2」の実践を目指し情報発信やアプリ紹介を実施 |
各種調査 | ストレスチェックのほかに従業員満足度調査、WFun*3の調査を実施 |
- 過去1~2カ月の血糖値の平均を示す指標で、6.5以上になると糖尿病が疑われる
- Lester Breslow教授の研究結果に基づく、「1.喫煙をしない、2.定期的に運動をする、3.飲酒は適量を守るか、しない、4.1日7-8時間の睡眠を、5.適正体重を維持する、6.朝食を食べる、7.間食をしない」の7つの健康習慣。実践の有無により、その後の寿命に影響する
- Work Functioning Impairment Scaleの略。産業医科大学で開発された、健康問題による労働機能障害の程度を測定するための調査票
健康経営活動のグローバル展開
ブラザーグループは、40以上の国と地域に拠点を置き、グローバルに事業を展開しています。海外赴任者やグローバルの従業員に対しても健康支援を実施できるよう、ブラザー工業健康管理センターの産業医と保健師は、海外のブラザーグループの拠点を訪問し、現地医療事情や従業員の職場および生活状況の把握を行っています。2020年度から2022年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で現地への訪問を中止しましたが、オンラインツールを活用して健康診断受診状況の管理やWeb面談を実施し、国内勤務の従業員と同様に健康面のサポートを行いました。その後、移動制限が緩和され、2023年4月にフィリピン、2024年3月にベトナムの生産拠点を訪問し、健康管理状況のヒアリングなどの健康支援を対面で行いました。そのほかにも、海外医療機関情報をイントラネットに公開したり、健康診断受診状況を確認したりするなど、海外赴任者が現地で健康に過ごせるよう支援を行っています。
日本から海外に渡航する従業員には、産業医が世界各地の健康情報・感染症情報をもとに健康教育を行い、HIVや結核、マラリアなどの感染症を予防するための感染経路や潜伏期間、発生症状などの情報を共有し、注意喚起を行っています。海外出向者に対しては、海外で生活する上での注意事項をまとめた「海外健康管理のしおり」で、情報を提供しています。また、イントラネットには感染症流行情報を掲載し、従業員への情報発信にも努めています。
世界的な感染症の流行リスクが高まった際には、リスク管理委員会の下部組織として、経営層・人事部・産業医などで構成される対策委員会を設立し、最新情報の収集やその情報をもとに対策を検討し、対応しています。
地域・社会への貢献
ブラザー工業では、将来の産業保健分野の担い手を育てることを目的に、大学の医学部や看護学部の学生に対して行われる地域実習に協力しています。実習では、ブラザーの健康経営や産業医および保健師の業務と役割についての講習を行うほか、製造現場を実際に見学する時間も設け、安全衛生管理の基礎を学ぶ場を提供しています。
ほかにも、外部からの依頼に応じて、ブラザーの産業医や保健師が、健康経営に関するセミナーに講師として登壇したり、地域の健康経営推進について近隣企業との意見交換会を実施したりするなど、健康経営推進活動を通じて地域・社会に貢献しています。
外部からの評価
ブラザーグループにおける健康経営に対する積極的な取り組みは、外部からも高く評価され、各種認定や受賞につながっています。
詳しくは「サステナビリティを重視した経営-外部からの評価-健康経営に関する評価」をご覧ください。