ブラザー工業とドミノ社の共同開発によるシナジー最大化
ブラザー工業のインクジェット技術を生かした自社製プリントヘッドをドミノブランド製品に搭載
デジタルラベル印刷機「N730i」は、ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)と子会社のDomino Printing Sciences, plc(以下、ドミノ社)が共同開発をした製品です。N730iには、ブラザー工業がこれまでに培ってきたインクジェット技術を生かした自社製プリントヘッド「BITSTAR™」を搭載。1200dpiという高解像度に加え、業界最小クラスのインク液滴サイズの組み合わせにより印刷品質を向上させ、白印字を含めた印字速度が毎分70mという高速化も実現しました。本体・プリントヘッド・インク全てをブラザーグループが開発していることを生かし、お客様視点での迅速な保守サービスにも力を入れています。
ブラザー工業は、2015年にドミノ社を完全子会社化して以来、グループ一丸となった事業運営により、シナジーの最大化に努めてきました。ブラザー工業とドミノ社による製品の共同開発は、ドミノ社買収当時からブラザーが目指していたシナジーであり、N730iは両社の知見が生かされました。今後もグループ一体となり、産業用印刷領域のさらなる発展を目指します。
4機種同時開発へのチャレンジ
部品不足問題を迅速に解決し、継続的にお客様に価値を提供
コンカレントチェーンでは、開発部門と製造部門、お取引先が密に連携し、デマンドチェーンでつくり上げた製品コンセプトをサプライチェーンで生産できるように、具体的なカタチにします。ブラザーでは製品開発にあたり、部門横断のコンカレントチームを結成し、コンカレントチェーンを推進します。新型コロナウイルス感染症の影響で、2022年度には主要部品の致命的な供給不足が発生しました。そのため、供給不足となった部品を使用していたラベリング事業の主要4製品について、別のお取引先の部品へ置き換える設計変更を行い、生産を維持することを目的としたコンカレントチームが結成されました。
コンカレントチームで知恵を出し合い、蓄積されたノウハウを生かしてプロセスを見直し、品質維持を確認した上で、試作や会議体などのプロセスの簡略化、業務フロー明確化によるチーム間の連携強化など、さまざまな取り組みを実施しました。部品変更に対応した製品を短期間で効率良く開発し生産したことで、お客様に製品を途切れることなくお届けすることができました。
コンカレントチームには製品開発のノウハウが蓄積されています。今回の取り組みで新たに獲得した知見や経験を今後の開発に生かすとともに、部品の安定調達のためのさまざまな取り組みを推進します。
アジア市場での拡販を目指した産業用サーマルプリンターを開発
プリンター開発で培った技術で、低速から高速まで高品質な印字を実現
熱転写*(サーマル)プリンターは、印刷時に液状のインクなどを使用せず、印刷による食品へのインク混入の心配がないため、食品の生産ラインに設置して使用されています。ブラザーは、ラベルライター「P-touch(ピータッチ)」で培った熱転写技術を応用し、ドミノ社のサーマルプリンタービジネスの最重要市場であるアジアでの拡販を目指し、フィルム包装材に賞味期限やバーコードなどを印刷する産業用サーマルプリンターVx150iを開発しました。
Vx150iは、製品の品質と信頼性を高めることで、アジア特有の高温多湿かつ粉じんの多い過酷な環境下においても安定した高速連続印字を実現するとともに、部品交換の頻度を従来機種と比較して大幅に削減することができました。また、上位機種のみに採用されていたカセット方式によるインクリボン装塡機構を、ベーシックモデルであるVx150iにも採用。インクリボン交換が容易になったことでインクリボン交換時の作業負荷が低減され、お客様の生産性向上に貢献しています。さらに、樹脂と金属を組み合わせた構造で低コストを実現したことに加えて、樹脂を多用して製品重量を軽減したことで、輸送時のCO2排出量も削減しています。Vx150iは、ベーシックモデルでありながら上位機種に匹敵する生産性と信頼性を実現する製品として、アジア市場において高く評価されています。
ブラザーグループは、今後とも、お客様にとって最適な製品を提供するため、さらなる技術力の向上に努めます。
- 熱でインクリボンを温め、紙などの対象物にインクが移ることで印刷できる技術。
コスト競争力のある部材を安定的に調達
生産拠点での部品展示会を通じて、お取引先との連携強化
ブラザー工業の品質・製造センター 購買部は、部材調達力向上のため、主要な海外拠点での部品展示会を通じて、お取引先との連携を強化しています。
2022年度にベトナム、フィリピン、中国のP&S事業の生産拠点で開催した部品展示会には、150社以上のお取引先から約400人が参加、さまざまな意見を交わす有意義な場となりました。
生産拠点の調達、製造、品質管理の各部門と購買部が協力して、製造現場での組み付け状況、品質管理のポイント、梱包形態などについて、お取引先に情報を共有。そして、コスト低減のアイデアや現地調達の可能性について、お取引先の視点からご提案を伺います。お取引先は、自社の製造技術をどのよう活用し、ブラザーのモノ創りに貢献できるかを検討することで、ビジネス拡大を目指します。
お取引先からは、「部品展示会に参加し、納入実績のない部品についても理解を深めることで、自社の強みと弱みを知り、さらなる事業の拡大に向けて、品質やコストなどの改善活動にフィードバックをする良い機会になります」というコメントが寄せられました。
ブラザーグループは、事業環境が大きく変化する中、高品質でコスト競争力のある部材を安定的に調達するため、今後とも、お取引先との強固な信頼関係を築き、共に成長・発展することを目指します。