パリ協定に賛同し温室効果ガス排出量を実質ゼロにする脱炭素社会形成へ貢献
2050年、ブラザーグループは、あらゆる事業活動のカーボンニュートラル*とバリューチェーン全体のCO2排出最小化を目指し、脱炭素社会の形成に貢献している。
- ブラザーグループから排出するCO2を全体としてゼロにする
主な取り組み:太陽光発電の導入、空調設備の更新、生産設備の更新・省エネ化など
CO2排出削減目標に対する進捗
「ブラザーグループ環境ビジョン2050」では、CO2排出削減に関する2030年度中期目標を2つ掲げています。これらの目標達成に向け、製品作りおよび生産活動のみならず、サプライヤーと協働してCO2排出削減に取り組んでいます。
2030年度中期目標
- [スコープ1・2] 2015年度比で65%削減する
- [スコープ3] C1・C11・C12 2015年度比で30%削減する
- 「2030年度中期目標」は、温室効果ガスの排出削減目標達成を推進するために設立された国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)」より、科学的根拠に基づいた目標(1.5°C目標)として認定されています。
また、「CS B2024」の2024年度目標として、スコープ1・2については2015年度比で47%のCO2排出量削減、スコープ3(C1・C11・C12)については自助努力で15万トン削減対策の実施を掲げて、CO2排出削減の推進に取り組んでいます。
2023年度は、スコープ1・2については2015年度比で45.1%の削減、スコープ3については従来製品より環境性能を高めた新製品の販売を開始、部品調達段階でのCO2排出量をお取引先と協働して削減しました。これに加え、製品本体の販売台数が減少した影響により、カテゴリー1・11・12において2015年度比で28.2%の削減になりました。
2023年度までの進捗
スコープ1・2・3の温室効果ガス(GHG)排出量
ブラザーグループは、当社が排出する温室効果ガス(GHG)を適切に算定および報告するために、温室効果ガスの算定・報告の国際規格であるISO14064-1に準拠してスコープ1・2・3の温室効果ガス排出量の算定・報告を行っています。また、その結果についてはISO14064-3の基準に基づき第三者検証を受けて、算定結果の確からしさの検証を行った上で算定結果を公開しています。
スコープ1・スコープ2・スコープ3
スコープは、温室効果ガスのサプライチェーン排出量における構成要素。三つに分類することで、重複する算定を最小化し、対象ガスの特定を可能にしている。
- スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
- スコープ2:他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
- スコープ3:スコープ1・スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)
2019~2023年度のISO 14064に基づいたスコープ1・2・3の温室効果ガス(GHG)排出量
カテゴリー | CO2排出量t-CO2換算値 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
スコープ1:直接排出 | 17,363 | 18,356 | 18,724 | 19,040 | 18,840 | |
スコープ2:エネルギー起源の間接排出:マーケット基準 | 107,285 | 98,685 | 105,099 | 93,409*1 | 91,228*1 | |
スコープ3:その他の間接排出 | 2,809,046 | 2,752,567 | 2,942,352 | 3,439,056*2,3 | 2,431,462*1 | |
C1 | 購入した製品・サービス | 1,351,272 | 1,302,661 | 1,404,939 | 1,671,015*2,3 | 1,253,780*1 |
C2 | 資本財 | 56,658 | 75,897 | 86,955 | 123,562 | 126,268 |
C3 | 燃料およびエネルギー関連活動 | 10,955 | 10,987 | 11,838 | 12,062 | 11,899 |
C4 | 輸送、配送(上流) | 80,691 | 103,148 | 138,978 | 99,236*2 | 95,109 |
C5 | 事業から出る廃棄物 | 3,680 | 4,138 | 2,849 | 3,257 | 3,991 |
C6 | 出張 | 3,663 | 1,558 | 1,887 | 4,023 | 6,502 |
C7 | 雇用者の通勤 | 14,247 | 14,698 | 14,819 | 14,768 | 15,553 |
C8 | リース資産(上流) | 5,176 | 4,642 | 4,101 | 3,827 | 4,588 |
C9 | 輸送、配送(下流) | 15,312 | 14,671 | 15,366 | 17,825*2 | 14,762 |
C10 | 販売した製品の加工 | - | - | - | - | - |
C11 | 販売した製品の使用 | 998,441 | 968,174 | 995,115 | 1,183,284*2 | 670,148 |
C12 | 販売した製品の廃棄 | 267,207 | 250,107 | 263,618 | 305,036*2 | 227,291 |
C13 | リース資産(下流) | 1,742 | 1,886 | 1,886 | 1,160 | 1,168 |
C14 | フランチャイズ | - | - | - | - | - |
C15 | 投資 | - | - | - | - | 402*4 |
スコープ1・2・3の合計 マーケット基準 |
2,933,694 | 2,869,608 | 3,066,176 | 3,551,505*1,2,3 | 2,541,530*1 |
- 外部からの再エネ電力証書利用後
- スコープ3の集計範囲にドミノ事業を追加したため、数値を変更
- C1(購入した製品・サービス)に、製品部材以外で購入した製品・サービスのCO2排出量を追加したため、数値を変更。ただし、追加分の2022年度排出量(スコープ3全体の約2%)はISO14064検証に含まない
- 2023年度から関連会社の排出量を加算
対象範囲
外部保証
事業所におけるCO2排出削減の取り組み
経済発展と環境保全が両立する社会の実現に対する関心が国際的に高まる中で、ブラザーグループは、事業成長と環境調和の好循環を共創・推進することによって、持続的発展が可能な社会への貢献を目指しています。
カーボンニュートラルの実現
ブラザーインダストリーズ (U.K.) Ltd.、ブラザーインダストリーズ(スロバキア)s.r.o.
ブラザーグループの生産拠点、ブラザーインダストリーズ(U.K.)とブラザーインダストリーズ(スロバキア)は、カーボンニュートラルを実現し、PAS2060:2014*の検証を完了しました。それぞれ、2021年、2022年に検証を受けて、以降も検証を毎年継続しています。省エネ活動の推進と再エネの最大限活用に加え、残余排出量をカーボンクレジットでオフセットすることにより、カーボンニュートラルを実現しています。
- PAS 2060 (Publicly Available Specification 2060):カーボンニュートラルを実現していることを証明する国際的な規格
ブラザー工業株式会社 刈谷工場
マシナリー事業における生産拠点の1つである刈谷工場は、2023年度のカーボンニュートラルを実現し、ISO 14068-1:2023*の検証を2024年10月に完了しました。なお、ブラザーグループでは、ISO 14068-1:2023規格に準拠したカーボンニュートラルの実現は今回が初めてであり、日本国内の製造業においても初の実現となりました。
刈谷工場では、省エネによるエネルギー使用の効率化と、積極的な再エネ導入を進めることを、GHG排出削減において最優先で取り組み、カーボンニュートラルを達成しました。刈谷工場で生産しているコンパクトマシニングセンタ「SPEEDIO」は、業界トップクラスの省エネ性能を誇り、お客様の部品加工プロセスにおいて4つの無駄(時間・資源・エネルギー・スペース)の削減を通じて、環境への負担を大幅に軽減しています。
- ISO 14068-1:2023: 組織や製品において、定量化、削減、オフセットを通じてカーボンニュートラルを達成・実証するための原則、要求事項、ガイダンスを提供した国際規格(2023年11月30日発行)
省エネ活動の推進
ブラザー東京ビルでは改修工事を行い、断熱性能を向上させるためのサッシの二重化、高効率な空調設備への切り替え、換気量制御のためのCO2センサー導入を行いました。また、屋上には太陽光パネルを設置し、ビル内で使用する電力の一部を再生可能エネルギーで賄っています。これらにより、環境省が推奨する「ZEB Ready」認証*をブラザー工業として初めて取得しました。
- ZEB(ゼブ)は、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称で、基準一次エネルギーの年間消費量を50%以上削減することができた建物には、「ZEB Ready」認証が与えられる
ブラザーインダストリーズ(スロバキア)は、CO2排出量と光熱費の削減を両立させながら環境パフォーマンスの向上を図るために、自然エネルギーを積極的に生かし、地下水の温度を利用した空調システムと太陽光発電システムを組み合わせたエネルギーシステムを、2020年から稼働しています。地下水温を使用した空調システムでは、事業所敷地内に設置されていた井戸を活用しました。
台弟工業股份有限公司、兄弟高科技(深圳)有限公司においては、エリアごと、時間ごと、用途ごとにエネルギーの見える化を行い、データ活用による無駄の抽出と改善活動を開始しました。また、空調の集中管理システムや、エア流量センサーによる異常検知システムを導入してエネルギーの効率化を図っています。
積極的な再生可能エネルギーの導入
2023年度に、日本では星崎工場(名古屋市南区)と技術開発センター(名古屋市瑞穂区)、ブラザーインダストリーズ(フィリピン)、ブラザーインダストリーズ(ベトナム)、兄弟高科技(深圳)有限公司に、合計5MWを超える太陽光パネルが新たに設置されました。港第1倉庫(名古屋市港区)では、設置された太陽光発電設備を活用して、2023年度にオンサイト・オフサイト複合型PPA*を導入し、太陽光パネルで発電した電力を港第1倉庫で自家消費するとともに、発生した余剰電力をブラザーミュージアム、ブラザー本社ビルに送電し、再生可能エネルギーの効率的な活用を行っています。
これは中部エリア初となる、再生可能エネルギーの導入拡大につながる先駆的な取り組みです。
- Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略。施設所有者が提供する敷地や屋根などのスペースに太陽光発電設備の所有、管理を行う会社が設置した太陽光発電システムで発電された電力をその施設の電力使用者へ有償提供する仕組み
ブラザーの展示館である「ブラザーミュージアム」では、瑞穂工場(名古屋市瑞穂区)の太陽光発電による電気で水を電気分解して生成される水素で製造したグリーン水素を活用し、当社製燃料電池で発電した電気を使用することでエネルギーの使用を削減しています。この取り組みは2023年度に、「中部圏低炭素水素認証制度*」で認定されました。
これらの取り組みにより、2023年度の自家発電量は、昨年度の2,074MWhから2倍強の5,567MWhに大幅に増加しました。今後も積極的に再生可能エネルギーを活用することで、エネルギー由来のCO2排出削減を推進していきます。
- 水素の製造、輸送、利用に伴う二酸化炭素の排出が少ない水素を「低炭素水素」として認証・情報発信する東海3県を対象とした認証制度
自家発電に加えて、再生可能エネルギー由来の電力(証書活用による再エネ調達を含む)も活用することで、2023年度の再生可能エネルギーの比率は17.7%となりました。ブラザーグループは事業活動で使用する電力の再生可能エネルギーへの転換を計画的に進めることで、地球の未来に貢献していきます。
2023年度の電力使用量
総電力量 | 199,990 MWh |
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再エネ電力量 | 35,544 MWh |
:自家発電量 | 5,567 MWh |
:購入した再生可能エネルギー量 (証書活用による再エネ調達を含む) | 29,977 MWh |
再生可能エネルギー比率 | 17.77% |
製品におけるCO2排出削減の取り組み
「ブラザーグループ中期環境行動計画2024」(2022~2024)に基づき、ブラザーグループは15万トン*のCO2排出量の削減施策を立案し、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、マシナリー事業、ニッセイ事業、パーソナル・アンド・ホーム事業の製品におけるCO2排出量削減に取り組んでいます。製品のライフサイクルのステージごとに小さな工夫の積み重ねや技術革新を組み合わせることにより、CO2排出の削減に貢献しています。
- 2021年度の事業活動と比較して、2024年度までに新たに実施した製品環境対応施策によって削減できたCO2排出量の総量。例:製品の小型、軽量化、再生材料の使用量拡大、待機時の消費電力削減など。
カラーLEDプリンターの小型軽量化(HL-L8240CDW)
従来製品(HL-L3270CDW)に比べ20%サイズダウンし、小型化、軽量化を実現したことで、原材料由来のCO2排出量を12%、製品輸送時のCO2排出量を25%、それぞれ削減することができました。また、ディープスリープ*時の消費電力を62%削減しました。
- 機器の動作モードの一つで、無操作時などに一部の機能を停止するスリープモードよりもさらに多くの機能を制限して消費電力を抑制するモード
産業用プリンターの消耗品インク(GTXproシリーズ)
ガーメントプリンター GTXproシリーズでは、消耗品インクに付帯するプラスチックや梱包材を削減する取り組みを進めてきました。消耗品インクを従来のカートリッジ交換方式から、パウチ交換方式やボトル供給方式へ切り替えたことにより、消耗品のプラスチックや梱包材の削減につながり、従来方式に比べてCO2排出削減にも貢献しています。
GT3(従来方式カートリッジ)(2012年) カートリッジ交換によるインク補充 |
GTXpro(2017年) 交換可能なパウチインクを採用し、カートリッジ廃棄量を削減 |
GTXpro B(2020年) ボトルインクシステムを採用し、インク交換に伴う廃棄物を削減 |
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白インク攪拌装置を搭載することでボトルインク化を実現
カートリッジ廃棄量(インクを除く)と梱包材使用量の削減によるCO2排出量に関して、従来方式と比べてパウチ交換方式は92%減*、ボトル供給方式は95%減*を達成しました。
あわせて、カートリッジに使用する資源量と梱包材使用量に関しても、従来方式と比べてパウチ交換方式は82%減*、ボトル供給方式は95%減*を達成し、資源使用量の削減にもつながっています。
- テストデータをTシャツに2,500枚印刷した場合の白インク消費に伴う削減量
サプライヤーとの協働
ブラザーグループのスコープ3のうち、購入した製品・サービスが50%以上を占めています。環境ビジョン達成のためには、製品(ブラザーにとっては部品)を調達する段階でのCO2排出量を削減することが必要不可欠です。
ブラザーグループは2023年度から主要な部品サプライヤー3社と協業し、ブラザー用の部品生産時に、再生可能エネルギーを電力として利用することでCO2削減に取り組んでいます。その結果、2023年度は約4,700トンのCO2削減を実現しました。
この活動は他の部品を生産するサプライヤーなど対象を順次拡大し、2024年度は累計3万トンのCO2削減を計画しています。
製品におけるCO2削減貢献
ブラザーグループは事業に直結する活動として、開発・調達・⽣産・販売・物流などモノ創りのあらゆるプロセスでCO2排出量の削減に向け、取り組みを進めてきました。気候変動(地球温暖化)を抑制し、脱炭素社会を達成するためには、社会全体のCO2排出量の削減にも取り組んでいく必要があります。例えば、ブラザー製品・サービスの省エネ性能の向上により、お客様のもとでのエネルギー使用量(消費電力量)を減らすことは、お客様が製品を使用される際のCO2排出量の削減にもつながり、社会全体からのCO2削減となります。また、消耗品の大容量化による省資源化は原材料調達時や廃棄時のCO2削減にもつながります。そこで、これらのCO2削減が実際にどのくらい社会に貢献しているのか、またその貢献量を増やしていくために、社会全体から削減したCO2をCO2削減貢献量と定義し、見える化を行いました。
今後もブラザーグループからのCO2排出量の削減を進めるとともに、お客様のもとでのCO2削減につながるブラザーの製品・サービスを提供することで、社会全体のCO2削減にも貢献してまいります。
CO2削減貢献量の実績
ブラザーグループはプリンティング製品・工作機械・工業用ミシン・家庭用ミシン・新事業製品などすべての製品について省エネ性能の向上や梱包材を含む資源の削減によるCO2削減貢献に取り組んでいます。その算定事例として、工作機械「SPEEDIO」の省エネ性能向上によるCO2削減貢献量を示します。
「SPEEDIO」は自社開発のNC制御により、機械性能を最大限に引き出す最適化制御を行っています。また、機械停止中に消費する電気やエアの無駄をなくし、コンパクト設計で限られたスペースでも効率的な配置が可能など、あらゆる無駄を取り除くことをコンセプトとしており、高い生産効率と省エネ性を実現することで、お客様のもとでのCO2削減に貢献します。
Blue Technology (SPEEDIOの環境性能)
CO2削減貢献量の算定方法(当社の調査結果による)
自社製品(工作機械「SPEEDIO」主軸30番機)と他社製品(30番機、40番機)を比較し、省エネ性能向上などによって得られる製品使用段階のCO2削減貢献量を算定
- 算定式(他社製品CO2排出量 - 自社製品CO2排出量) × 製品販売台数(製品を10年間使用時の試算)
- 他社製品CO2排出量は一般的な主軸30番機と40番機を当社のシナリオに基づき設定し、当社用意の加工プログラムで動作させたデータを参考に算出(主軸30番機・40番機とは工具取り付け部分の大きさで、製品カテゴリーを表す工作機械業界の用語)
- 削減貢献量は当社独自のシナリオに基づき算定しており、実際の削減量とは異なります
- 算定内容は、経済産業省「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン」(2018年3月)に基づき、第三者の専門家による監修を受けています
また、前述のカラーLEDプリンターやガーメントプリンターの消耗品⼤容量化による使⽤個数削減および梱包材削減による2023年度のCO2削減貢献量は、約1.9万トンとなりました。
CDP質問書2024
CDP(旧カーボン・ディスクロージャ・プロジェクト)は 、2000年に設立された国際的な環境非営利組織であり、その情報開示システムは世界経済における環境報告のグローバルスタンダードとなっています。
CDPの環境に関するデータは、金融市場、政策イニシアチブ、その他さまざまなステークホルダーによって活用されています。
ブラザー工業は、CDP気候変動は2011年から、CDP水セキュリティーは2015年から参加し、質問書に回答しています。
※:2024年は、気候変動・フォレスト・ウォーターセキュリティ・プラスチック・生物多様性質問が統合され、CDP質問書(CDP Questionnaire)となりました。