創業以来の事業の多角化で培ったモノづくり技術
ブラザーグループは、1908年にミシンの修理業からスタートしました。ミシンの修理で培った製品知識をもとに、1932年には国産家庭用ミシンの量産化に成功しました。その後、ミシンの開発・製造で培ったプレス技術や精密加工技術を生かして、タイプライターや家電などにも事業を拡大しました。さらにモーター技術や電子技術を組み合わせることで、工作機械や情報通信機器など、民生用・産業用両面にわたり、さまざまな製品を開発してきました。この多様な独自技術の広がりにより、ブラザーならではの価値をお客様に提供しています。
年代 | 元となる製品・技術 | 組み合わせ・応用 | 新たな製品・事業 |
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1960年代 | ミシンの加工技術、鋳造技術など | ⇒ | タイプライター |
ミシン加工のための社内技術 | ⇒ | タッピングマシン (工作機械分野) |
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1980年代 | 電子パーソナルプリンターのサーマル印字技術や、日本語ワードプロセッサーの片仮名漢字変換技術 | ⇒ | ラベルライター |
サーマル印字技術と情報通信技術、読み取り技術 | ⇒ | ファクス | |
パソコンソフト自動販売機「TAKERU」のコンテンツ配信技術 | ⇒ | 業務用 通信カラオケシステム |
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1990年代 | ファクス・プリンターの電子写真技術やインクジェット印字技術 | ⇒ | 小型複合機 |
2000年代 | 民生用プリンターのインクジェット印字技術 | ⇒ | ガーメントプリンター |
知財戦略の推進体制
ブラザー工業は、事業領域ごとに開発部門と知的財産部門がさまざまな観点から知財戦略を検討し、目標を設定しています。知財戦略を確実に実行するため、定期的に報告会を開催し、重要な意思決定を要するものについては、事業担当役員をはじめとする経営層に随時報告し、指示を仰ぐ体制をとっています。
一方、従業員に対しては報奨および表彰制度を設け、発明や意匠の創作および知財活動を奨励しています。社内で創出された発明を、あえて出願せずノウハウとして社内管理し、発明した従業員を報奨する社内報奨制度も設けています。また、2024年度には工作機械における「エアを用いた工具洗浄装置」に関する発明で中部地方発明表彰を受賞しましたが、このような社外における発明表彰について社内に発信し周知を図っています。
知的資本への投資と強化の取り組み
ブラザーグループビジョン「At your side 2030」の実現に向けた事業ポートフォリオの変革を目指し、お客様の求める製品やサービスを創出するために、多様な独自技術の研究開発に取り組んでいます。2024年度には、ブラザーグループ全体で約495億円の研究開発費を投じています。事業ポートフォリオ変革の柱の一つである産業用印刷領域強化を支えるインクジェットヘッド技術については、豊富な特許を有しています。プリンティング・アンド・ソリューションズ事業では、新しいインクジェットプリンティング技術を「MAXIDRIVE(マキシドライブ)」と命名し、技術商標としてブランド化を図ることで、特許と商標の両面で知的財産を保護しています。これらの事業を支えるために、特許・実用新案・意匠・商標などの知的財産権を適切に組み合わせつつ権利化・活用する活動を強化しています。また、未来の事業ポートフォリオにおける取り組みの一環として、名古屋工業大学などの外部機関との連携を強化して、新規技術や新規事業の創出促進を図っています。
特許権保有件数と人財育成
ブラザーグループは、各事業領域の状況に応じて、知的財産の権利化を行っています。例えば、産業用印刷領域では、当社の基盤の一つであるインクジェット関連技術の積極的な権利化などで、事業の飛躍をサポートしています。また、プリンティング領域では、特許件数の多い業界において、収益性の向上と優位性の維持を図るため、価値の高い特許権を相当数保有する活動を継続しています。ほかにも、開発部門と知的財産部門が連携して将来有望な技術を見いだし、参入障壁としての特許権獲得を含む戦略的知財活動も行っています。2025年3月には、ブラザー工業は、英国クラリベイト社から、世界のイノベーション・エコシステムの頂点に立つ組織として「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター 2025」に選出されました(今回で8回目の受賞)。
また、保有権利をさまざまな形で活用しています。例えば、権利侵害品の製造・販売により当社事業が脅かされる場合は、差し止めや損害賠償を求めて、警告や権利行使をすることもあります。
一方で、第三者の権利を尊重しており、新製品開発などで他社の知的財産権を侵害しないよう、入念な調査を行っています。これらの活動を強固なものにするために、知的財産に関わる人財を継続的に育成しています。設計者には、レベルに応じた社内e-ラーニングや研修など、知的財産に関する知識を深める機会を提供するとともに、知的財産部門の人財には、数年にわたるプログラムで、プロとしての専門教育を実施しています。
特許権取得状況
国内特許公開件数 | 985件(2024年度) |
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国内特許登録件数 | 1,021件(同上) |
米国特許登録件数 | 585件(同上) |
全世界特許権保有件数 | 約3万件(2025年3月31日現在) |
オープンイノベーション
お客様の課題を解決するため、社内外の技術や情報を活用する社内プラットホームを構築し、オープンイノベーションを推進しています。社内プラットホームでは、社内の各開発部門が抱える技術課題や関心をとりまとめ、大学やスタートアップなどの最適な社外パートナーの発掘・紹介や、社内で調査・分析した情報の共有ができる、社内外活用ワーキンググループを運営しています。
※Venture Capital:将来成長が見込めるベンチャー企業に投資する組織のこと