環境方針
ブラザーグループはエネルギーや資源を使用し紙や糸、布などの自然由来の物を使用する製品を提供する企業として、気候変動や資源枯渇、環境汚染、生態系破壊といった社会的な重要課題をブラザーグループの事業上のリスクとして捉え、長期的かつ継続的にその解決に取り組んでおり、この考えの根拠となる方針として、以下を制定しています。
TNFD提言への賛同
ブラザーグループは2025年2月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の取り組みに賛同し、TNFDフォーラムに参画するとともに、「TNFD Adopter」に登録しました。
一般要件
- マテリアリティの適用
TNFDに基づく自然関連影響評価においては、「環境・社会が自社に与える影響」と「自社が環境・社会に与える影響」の2軸を考慮したダブルマテリアリティのアプローチを適用しています。 - 開示スコープ
今回の評価は、TNFDで推奨するLEAPアプローチ*1に準拠して実施しており、ブラザーグループの全ての事業*2における製品および直接操業の拠点を対象に評価を行いました。製品を対象とした評価においては、自然関連課題が自社の直接操業だけでなく、上流・下流のバリューチェーンにおいて発生することを認識しています。また拠点を対象とした評価においては、直接操業のうち特に自然への依存・インパクトが高いことが想定される生産拠点および本社含む日本の拠点の計17拠点について実施することとしました。具体的な評価アプローチとして、製品に関してはENCORE*3を使用して、自然へのインパクトドライバー(影響要因)と生態系サービスへの依存を特定するとともに、その重要度について定性的な評価を行いました。また生産拠点に関してはGIS*4データを用いてバイオーム(生物群系)*5の整理を行い、TNFDの基準に沿って、要注意地域(センシティブ・ロケーション)の選定を行いました。
- 自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチであり、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)の4つのフェーズで構成
- プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、マシナリー事業、ドミノ事業、ニッセイ事業、パーソナル・アンド・ホーム事業、ネットワーク・アンド・コンテンツ事業および新規事業
- Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure: 自然へのインパクトと依存を把握するための分析ツール
- Geographic Information System: 地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術
- 生態系の一種。平均降雨量と気温の下で形成される植物の種類によって定義される
- 自然関連課題がある地域
生産拠点および本社含む日本の拠点計17拠点における評価は、「生物多様性の重要性」、「生態系の十全性」、「生態系サービス供給の重要性」、「水の物理的リスク」の4つの基準に沿って評価を実施し、要注意地域(センシティブ・ロケーション)を特定しました。今後はこれらの拠点に関して、より詳細な分析を進めていく予定です。 - 他のサステナビリティ関連の開示を統合
ブラザーグループでは2020年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同し、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会を分析して開示しました。今後は気候関連財務情報開示と自然関連財務情報開示の統合を目指します。 - 考慮した時間軸
【短期】会計年度をベースとする1~2年
【中期】中期経営戦略を含む3~4年
【長期】長期グループビジョンを含む5年以上 - 先住民、地域コミュニティー、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
ブラザーグループは人権グローバルポリシーを策定し、「国際人権章典」および「労働における基本的原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」が定める人権を尊重し、国連人権理事会により承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権尊重の取り組みを推進します。また人権デューデリジェンスにおいては、主要事業のサプライヤーに対して人権尊重への取り組みを要請し、サプライチェーンにおける責任ある調達を目指します。
TNFD提言:ガバナンス
ブラザーグループは、マテリアリティを解決するための活動など、サステナビリティを重視した経営をグローバルに推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会の傘下には、気候変動や生物多様性など環境課題に対応する「気候変動対応分科会」と、人権尊重や安全な職場環境の整備を推進する「責任あるバリューチェーン分科会」など5つの分科会があり、それぞれが目標の進捗管理や活動推進を担っています。分科会オーナーは活動状況をサステナビリティ委員会へ定期的に報告し、委員長である社長または社長が指名する者は、年に1回以上、取締役会に活動内容を報告しています。
気候関連の環境リスクや環境課題に関する重要事項の策定や改定が必要な場合は、分科会やサステナビリティ委員会で検討し、戦略会議で審議したうえで、取締役会で決議されます。取締役会は、内容について指導・監督し、全社的な推進体制の強化に努めています。また、気候変動への取り組みの実効性を高めるため、主要な目標の達成度を役員報酬に連動させています。
【2024年度の開催状況】 | ||
気候変動対応分科会 | 3回 | |
責任あるバリューチェーン分科会 | 8回 | |
サステナビリティ委員会 | 19回 | うち 気候変動対応分科会関連15回: 気候変動を含むマテリアリティ評価結果の報告・審議やスコープ3および資源循環目標改定に関する報告・審議、生物多様性保全に関する報告・審議など 責任あるバリューチェーン分科会関連13回: 責任あるバリューチェーンの追求に関する活動目標の審議と進捗・課題の報告など |
取締役会 | 1回 | サステナビリティ委員会の活動計画を報告 |
ブラザー工業株式会社ガバナンス体制図 (2025年6月25日現在)
TNFD提言:戦略
事業ベースの評価結果および課題
今回の評価においてはまず、事業活動を上流/直接操業/下流に分類し、整理を行いました。その後、ENCOREを使用して自然へのインパクトドライバー(影響要因)と生態系サービスへの依存を特定するために、ヒートマップを作成しました。その結果、上流においては樹脂生産時の水使用、金属・紙における水使用や土地利用、直接操業においては汚染や洪水緩和などの防災機能への依存、下流においては廃棄プロセスなどを通じた汚染、製品に使われる紙生産時の土地利用や水利用などの依存やインパクトを確認しました。特定された依存・インパクトのうち、自社の主力事業の製品であるプリンターを使用する上で不可欠な"紙"と、全事業の製品生産において不可欠な"紙"および"鉱物"については、最優先で詳細分析を行い、リスクや機会の特定と対応策の検討を計画しています。
<ヒートマップ(自然への依存)>
<ヒートマップ(自然へのインパクト)>
拠点ベースの評価結果および課題
今回分析を行った拠点は以下の17拠点です。
番号 | エリア | 拠点名 |
1 | 日本 | 本社 |
2 | 日本 | 瑞穂工場 |
3 | 日本 | 星崎工場 |
4 | 日本 | 桃園工場 |
5 | 日本 | 刈谷工場 |
6 | 日本 | 株式会社ニッセイ 本社および本社工場 |
7 | 欧州 | BROTHER INDUSTRIES (U.K.) LTD. |
8 | 欧州 | BROTHER INDUSTRIES (SLOVAKIA) s.r.o. |
9 | 南北アメリカ | BROTHER INDUSTRIES (U.S.A.) INC. |
10 | アジア・オセアニア | TAIWAN BROTHER INDUSTRIES, LTD. |
11 | アジア・オセアニア | ZHUHAI BROTHER INDUSTRIES, CO., LTD. |
12 | アジア・オセアニア | BROTHER MACHINERY XIAN CO., LTD. |
13 | アジア・オセアニア | BROTHER INDUSTRIES (VIETNAM) LTD. |
14 | アジア・オセアニア | BROTHER TECHNOLOGY (SHENZHEN) LTD. |
15 | アジア・オセアニア | BROTHER INDUSTRIES SAIGON, LTD. |
16 | アジア・オセアニア | BROTHER INDUSTRIES (PHILIPPINES), INC. |
17 | アジア・オセアニア | NISSEI GEAR MOTOR MFG.(CHANGZHOU) CO., LTD. |
まず、TNFDフレームワークの中で例示されている「IUCN Global Ecosystem Typology 2.0」を参照し、拠点におけるバイオームの整理を行いました。
その後、「生物多様性の重要性」、「生態系の十全性」、「生態系サービス供給の重要性」、「水の物理的リスク」の4つの基準に沿って評価を実施し、要注意地域(センシティブ・ロケーション)を特定しました。今後はこれらの拠点について深掘りを行うとともに、スコープを広げ、他のグループ拠点やバリューチェーンについても評価を行う予定です。
TNFD提言:リスクとインパクトの管理
気候変動や資源枯渇、環境汚染、生態系破壊といった社会的な重要課題をブラザーグループの事業上のリスクとして捉え、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」にて長期的かつ継続的にその解決に取り組むことを明確にしています。
ブラザーグループでは、2022年度にサステナビリティの推進とリスク管理を目的に、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設立し、重要なリスクと機会を識別、評価し、適切な対応指示を行っています。サステナビリティ委員会の下部組織として設けられた気候変動対応分科会で、重要な問題を特定し、適切な対策を決定し、実行し進捗状況を定期的にモニタリングしています。
TNFD提言:測定指標とターゲット
ブラザーグループでは、TNFD中核開示指標および追加開示指標のうち、以下について開示を行っています。なお、現在開示できていない中核開示指標についても、開示に向けた検討・準備を今後進めていきます。
中核開示指標
指標番号 | 指標 | 参照先 | |||
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- | GHG排出量 | ||||
指標番号 | 指標 | 2024年実績 | 2030年度目標 | 備考 | |
C2.1 | 排水量 | 公共用水域 | 126,247 m3 | グループ生産拠点において継続的に水資源の効率的な利用と適正処理による排水に努めている ※数値目標はなし | 対象拠点は、マテリアルバランス [PDF/350KB] 5ページをご覧ください。 |
下水道 | 375,282 m3 | ||||
その他 | 0 m3 | ||||
C2.3 | プラスチック汚染 | 製品の樹脂使用量 | 74,165.80ton | ※数値目標はなし | 対象事業:P&S EMFの2023 Recyclability Assessment Toolより、LDPEとHDPEは「大規模にリサイクル可能なプラスチック」として分類。 LDPEとHDPE以外は「技術的にリサイクル可能なプラスチック」として分類。 |
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96.54% | ||||
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0.20% | ||||
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3.26% | ||||
包装材の樹脂使用量 | 5,726.08ton | ||||
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73.05% | ||||
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26.95% | ||||
C3.0 | 水不足地域からの取水量 | 上水 | 20,520 m3 | グループ生産拠点において継続的に水資源の効率的な利用と適正処理による排水に努めている ※数値目標はなし | 対象拠点:兄弟機械(西安)有限公司 |
工業用水 | 0 m3 | ||||
地下水 | 0 m3 |
追加開示指標
指標番号 | 指標 | 2024年実績 | 2030年度目標 | 備考 | |
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A3.0 | 総取水量 | 上水 | 446,818 m3 | グループ生産拠点において継続的に水資源の効率的な利用と適正処理による排水に努めている ※数値目標はなし | 対象拠点は、マテリアルバランス [PDF/350KB] 5ページをご覧ください。 |
工業用水 | 0 m3 | ||||
地下水 | 151,316 m3 | ||||
A3.2 | リサイクルされた水の割合 | 16,354 m3 | グループ生産拠点において継続的に水資源の効率的な利用と適正処理による排水に努めている ※数値目標はなし | 対象拠点は、マテリアルバランス [PDF/350KB] 5ページをご覧ください。 |
今後開示予定の中核開示指標
C1.0, C1.1, C2.0, C2.2, C2.4, C3.1, C4.0, C5.0, C7.0, C7.1, C7.2, C7.3, C7.4