ビジネスとして社会課題の解決や地域活性化に取り組む若者を支援
「東海若手起業塾」の立ち上げに参画し、継続して起業家支援をサポート
ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)は、本社のある東海地区で社会課題の解決や地域活性化にビジネスとして取り組む若い社会起業家を支援する「東海若手起業塾」の立ち上げに参画し、その活動への協賛を2008年に開始しました。
起業塾では、起業家の事業戦略立案やサービス開発の支援など事業を成長軌道に乗せるための取り組みをしており、2024年度までの17年間で、70人以上の介護や福祉、多文化共生、子どもの学び場づくり、子育て支援、町づくりなどに携わる起業家を支援してきました。
従業員がプロボノ*1として社会課題解決に参画できる仕組みを構築
2012年からは、ブラザー工業の従業員が毎年、東海若手起業塾の塾生に伴走するプロボノとして参加しています。
プロボノとして参画した従業員は、6カ月間で合計50時間の就業時間を活動にあてることが認められており、就業時間以外の時間も使いながら、提供するサービスの価値を向上させる戦略の立案、ターゲットの絞り込み、市場調査のサポート、販売計画の策定など起業家に対して支援を行います。
従業員がプロボノとして参画することで、自身の業務で培ったスキルや経験を生かしたサポートができるだけでなく、起業家のサポートを通じてアントレプレナーシップ*2を学ぶこともでき、従業員の学びと成長の機会拡充や事業を通じた社会課題解決の促進につながっています。
2024年度の取り組み
2024年度は、選考会を通じて選ばれた4人が17期生として起業塾に参加し、ブラザー工業からはプロボノとして4人の従業員が参加しました。塾生は、プロボノによる支援を受けながら、各種研修など半年間にわたる活動を通じて、事業のビジョンや戦略をブラッシュアップし、より具体化していきました。
2025年3月に開催された最終報告会では、今後の事業展開や目指すビジョンが塾生から共有され、プロボノとして参画した従業員からは、「起業家の支援を通じて、視座が高まった」といった声が寄せられました。
2024年度はほかにも、社内におけるプロボノ経験者のネットワーク構築と起業家たちのコミュニティー強化を目指し、東海若手起業塾の卒塾生とこれまでプロボノとして参画した従業員などを対象とした「ギャザリングDAY」を開催しました。「ギャザリングDAY」では、卒塾生が現在の事業内容や活動状況、課題を共有し、参加者全員で課題への対策を検討しました。また17期生が事業のビジョンを発表し、卒塾生が発表内容に対してフィードバックを行うなど、起業家たちが次のステップへ踏み出すための有意義な機会となりました。
東海若手起業塾 最終報告会
過去の東海若手起業塾生とプロボノらが集まる「ギャザリングDAY」
ブラザー工業は、これからも、若手起業家を支援する起業塾への協賛を通じて、社会課題の解決や地域の活性化に貢献していきます。さらに、従業員のプロボノ活動によって、従業員の学びと成長の機会を拡充するとともに、事業を通じた社会課題の解決を促進していきます。
- 従業員が、会社の業務で培ったスキルを、それぞれの起業家の支援に生かす活動のこと
- 新しい事業を創造し、リスクに挑戦する姿勢のこと
南アフリカ共和国で、恵まれない若者たちの就労を支援
南アフリカの販売拠点であるブラザーインターナショナル(南アフリカ) (Pty) Ltd. (以下、BI(南ア))は、同国の経済発展と雇用創出を目指して、黒人経済力強化政策に沿った活動を推進しています。黒人経済力強化政策とは、歴史的に不当な差別を受け、不利益を被ってきた南アフリカ人に対する経済力強化政策で、不公平解消に向けた企業の取り組みや貢献度を要素別にスコア化し、スコアに応じて格付け(最高のレベル1からレベル8および不遵守)をするものです。
2024年度、BI(南ア)は、TBL*1やSEDA*2と共に、ビジネスの立ち上げ、維持、拡大に必要な基本的なスキル、知識、実践的なツールなどのトレーニングプログラムを起業家向けに提供し、計80人が参加しました。また、女性や若者に対しても、能力開発の機会や雇用機会を提供しました。
ブラザーグループは今後も、歴史的に不利益を被ってきた南アフリカ人の処遇を改善することで、社会課題の解決に貢献していきます。
- The Business Labの略。南アフリカ経済の発展を目指し、起業家の支援や中小企業・大企業におけるビジネスの成長を後押しする団体のこと
- Small Enterprise Development Agencyの略。南アフリカ政府が設立した、中小企業支援を行う機関のこと
環境イベント「ブラザーアースキッズアカデミー」開催
放課後児童クラブ(学童保育所)へ通う子どもたちに、学びの場を提供
「ブラザーアースキッズアカデミー」は、学童保育所で夏休みを過ごす子どもたちに対して2018年度から開催しているイベントで、工作を通じて環境問題について学ぶ機会を提供しています。イベントでは、「絶滅危惧動物図鑑」の制作を通じて、絶滅危惧種が増加する原因を調べ、その原因の一つである地球温暖化の仕組みや温暖化防止につながる取り組みについて学ぶプログラムを実施しています。
「絶滅危惧動物図鑑」制作の様子
「ブラザーキッズアカデミー」は、ブラザー工業の企業ミュージアムである「ブラザーミュージアム」でのイベントと、学童保育所を訪問して開催する「出前イベント」があり、2018年度から2025年度までに約70回開催し、約3,200人が参加しました*。
- 2018・2019年度はブラザーミュージアムのみ。2020年度・2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインイベントとして開催
2025年度の「ブラザーアースキッズアカデミー」
2025年度は、7月23日から8月28日の期間に、ブラザーミュージアムでのイベント2回、出前イベント6回の計8回を開催し、子ども・指導員合わせて約300人が参加しました。近年の夏の暑さの影響もあり、外出せずに参加できる出前イベントへのニーズが高まっています。
出前イベントの様子
イベントでは、「絶滅危惧動物図鑑」の制作に加え、ブラザーのスキャンカット*を用いた「名札づくり」も実施するなど、地球環境について学ぶだけでなく、創造力を発揮できる体験型のプログラムとなっています。
出来上がったさまざまな名札
参加した子どもたちからは、「この学習を通して、地球温暖化と絶滅危惧種のつながりについて考えることができた」「温暖化防止につながる活動について、周りに呼びかけたいと思った」といった感想が寄せられました。
これらの活動などが評価され、ブラザー工業は、生物多様性保全に関して優れた取り組みを行っている企業として愛知県から「あいち生物多様性優良認証企業」に認定されています。
ブラザー工業はこれからも、持続可能な社会の実現に向け、地域への教育支援活動や地球環境保全につながる取り組みを推進していきます。
- ハサミやカッターを使わずに、タッチパネルの操作で紙や布、薄いプラスチックシートやステッカーなどをカットできる製品
中国で、経済的に恵まれない農村の女性を支援
雲南省の女性たちに、ミシンを寄贈
中国の販売拠点である兄弟(中国)商業有限公司(以下、BCN)は、「中国社会の発展、人々の豊かな生活の実現に貢献する」をミッションとして掲げており、中国・雲南省で経済的に恵まれない女性を支援する活動を行っています。
中国では、著しい経済成長を遂げている一方で、都市部と農村部における格差が生じており、中国の最南西部に位置する雲南省でも、就職難の女性がいます。女性たちは、雲南省の伝統文化で、中国の無形文化遺産にも登録されている手縫いの刺しゅうなどの仕事はあるものの、十分な収入を得るためには出稼ぎをしなければならず、その結果、家族や子どもたちと離れて暮らさなければなりません。このようにして親の出稼ぎによって農村部に残された子どもたちは、「留守児童」と呼ばれ、中国特有の社会問題となっています。
そこでBCNでは、2022年度から2024年度にかけて、ミシン36台を寄贈するとともに、使用方法に関する研修を行うための費用を寄付しました。これらの活動によって、女性たちは、雲南省伝統の刺しゅうを用いたかばんや財布などの工芸品を製作することが可能になり、より多くの収入が得られるようになりました。さらに、地元で働き続けることができるようになったことから、家族や子どもたちと一緒に暮らすことができるようになり、「留守児童」問題の改善をもたらしました。
寄贈したミシンを用いた研修の様子
ブラザーグループでは、ブラザーグループビジョン「At your side2030」で「あり続けたい姿」として掲げる「社会の発展と地球の未来に貢献する」を実現するために、6つのマテリアリティを特定しています。そのうちの一つである「人々の価値創出の支援」に向けて、BCNは今後も、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでいきます。
デジタルインフラが不足する ベナン(アフリカ)農村地域の課題に挑む
ブラザーグループは、株式会社Dots for(以下Dots for)が展開しているベナン(アフリカ)の地方農村部における印刷・コピー事業の有効性を確認するための実証実験に参加しています。今回の実証実験では、耐久性に優れたブラザーのインクジェット複合機が活用されました。デジタル化の波から取り残された地方農村では、村内に印刷・コピーを行う場所がなく、数十キロ離れた近隣の街まで1日かけて移動し、印刷やコピーを行うことがあります。 Dots forの新しい形の地域サービス拠点「村の印刷サービス」を通じて、スマホを使って利用できる印刷・コピーサービスを複数の村で提供することで、住民の生活の質向上に貢献しています。
ブラザーのインクジェット複合機を活用した印刷サービスの様子