サステナビリティ

環境(E)

気候変動対応(TCFD提言に基づく開示)

サステナビリティ

  • 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 12 つくる責任つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を

気候変動への対応

ブラザーグループは世界各国・地域で事業展開するグローバル企業として、地球温暖化防止への取り組みを最重要課題の一つと位置づけています。事業に直結する活動として、CO2排出量の削減に向け、開発・調達・生産・販売・物流などモノ創りのあらゆるプロセスで、多様な環境配慮と環境技術開発に向き合っています。これらの取り組みを進めていく上で我々が大切にしているのは、1999年に策定した「ブラザーグループ グローバル憲章」の中でうたっている、「ブラザーグループは持続的発展が可能な社会の構築に向け、企業活動のあらゆる面で環境負荷低減に前向きで継続的な取り組みをする」という、環境への取り組みの基本理念です。これは、1993年にブラザー工業が「環境基本方針」を策定した当時の考えを今に受け継いだものであり、この方針策定以降、ブラザーグループとして中期的な環境目標を定めて継続的な活動を推進し、グループ一人ひとりの努力により着実に成果を上げてきました。2018年には、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を策定、CO2排出削減を重要項目の一つに掲げています。また、気候変動(地球温暖化)抑制の世界的枠組みである「パリ協定」を見据えて、マイルストーン「2030年度中期目標」を設定しました。2021年10月には「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」のCO2排出削減目標を改定し、改定した中期目標は国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative (SBTi)」から、パリ協定の「1.5°C目標」達成のための科学的根拠に基づく削減目標として認定されています。ブラザーグループでは脱炭素社会の構築に向け、世界的な気候変動問題の解決に貢献していくために、今後も様々な取り組みを続けてまいります。

気候変動対策のあゆみ

1993年 「ブラザー環境方針(ボランタリープラン)」策定
1999年 「ブラザーグループ グローバル憲章」策定
2009年 2020年度までに達成すべきCO2削減目標となる「2020年度中期目標」を掲げ、CO2排出量削減の取り組みを開始
2013年 CO2排出量削減活動の対象範囲をグループ全体に拡大し、さらには自社からのCO2排出量だけでなく製品のサプライチェーン全体におけるCO2排出量の算定と削減を開始
2018年 「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を策定とそのマイルストーンとして「2030年度中期目標」を設定
環境ビジョンにおけるCO2排出削減「2030年度中期目標」が、国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative (SBTi)」による「2.0°C目標」の認定を取得
2020年 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同
TCFD提言に基づき、気候変動が主要事業に及ぼすリスクと機会を分析
2021年 TCFD提言に基づいた関連情報開示
「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」のCO2排出削減目標を改定
2022年 改定した環境ビジョンのCO2排出削減「2030年度中期目標」が、国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative (SBTi)」による「1.5°C目標」の認定を取得
「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」の資源循環目標を改定

TCFD提言に賛同し、より一層の気候変動対策を推進

ブラザーグループは社会の発展と地球の未来に貢献するため、CO2排出削減をマテリアリティ(解決すべき重要な社会課題)の一つとして特定し、サステナビリティ目標を設定しています。2020年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しました。

TCFDロゴ

このTCFDの提言に基づき、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、マシナリー事業、パーソナル・アンド・ホーム事業および新規事業について、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会を分析し、関連する情報を開示しました。今後は分析対象とする事業範囲を拡大し、情報開示の充足に努めるとともに、脱炭素社会の形成に貢献するため、より一層の気候変動対策を推進していきます。

TCFD提言:ガバナンス

ブラザーグループは、マテリアリティへの取り組みをグローバルに推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しており、その傘下に、気候変動を中心とした地球の未来に関わるマテリアリティ解決の推進に特化した気候変動対応分科会を設置しています。
サステナビリティ委員会は、気候変動対策を含む活動計画および活動実績について、委員長である社長(または社長の指名する者)が年に3回以上の委員会での報告と、年1回以上の取締役会での報告を行い、全社での推進管理を強化しています。また、取り組みに実効性を持たせるため、気候変動に関わる主要な目標の達成度と役員報酬を連動させています。
一方、気候変動対応分科会は、気候変動対応戦略部長がオーナーを務め、気候変動を中心とした環境分野のサステナビリティ目標の進捗管理および活動推進を目的とし、それらの活動状況をサステナビリティ委員会へ定期的に報告しています。
環境リスクや環境課題など重要事項を策定および改訂する場合には、サステナビリティ委員会または気候変動対応分科会で検討の上、戦略会議で審議し、最終的に取締役会で決議を行い経営層からの指示・監督を受けています。
2023年度、気候変動対応分科会は4回開催されました。また、サステナビリティ委員会は10回開催されました。このうち4回は気候変動対応分科会で検討された結果も報告しています。取締役会ではサステナビリティ委員会の活動報告を1回行いました。

ブラザー工業株式会社ガバナンス体制図 (2024年6月25日現在)

ブラザー工業株式会社ガバナンス体制図

TCFD提言:戦略 (シナリオ分析)

ブラザーグループは、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」でCO2排出削減を重要項目の一つに掲げています。世界的に深刻化する気候変動を社会的な重要課題と認識するとともに、ブラザーグループの事業上のリスクと機会として捉え、長期的かつ継続的にその解決に取り組んでいます。
2020年度は、主要な事業について「1.5°Cシナリオ」*1と「4.0°Cシナリオ」*2に基づき、7つの重要なリスクと機会を特定し、自社の事業や財務に及ぼす影響を評価しました*3。この分析の結果、リスク、機会の両面において、ブラザーグループにとってカーボンニュートラル*4の推進、特にサーキュラーエコノミー対応の推進が重要である事が判明しました。事業戦略や事業活動に落とし込むため中期戦略「CS B2024」の「持続可能な未来に向けた経営基盤の変革」の中で「カーボンニュートラルに向けた環境への取り組み」を掲げ、CO2排出削減と資源循環に関わるサステナビリティ目標を設定し、重要な経営課題として活動を推進しています。

  1. 世界で温暖化対策が進み、脱炭素社会の実現に近づくというシナリオ
  2. 世界で現状を上回る温暖化対策がとられず、気温上昇がさらに進むシナリオ
  3. IEA (International Energy Agency)のSDS(持続可能な開発シナリオ)、IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change)のRCP8.5シナリオ、Aqueduct(水リスク評価ツール)などを参照
  4. ブラザーグループから排出するCO2を全体としてゼロにする

シナリオ分析のプロセス

気候関連リスク

移行リスク(政策・法規制リスク、市場の変化)

外部環境の変化 財務
影響
想定
時期
ブラザーグループへの影響 対応策
カーボンニュートラル
炭素税導入または炭素税率上昇 中期 炭素税の導入または炭素税率の上昇による製品・サービス原価の増加
  • 事業所におけるCO2排出削減*1
    各拠点での省エネ施策の推進、再生可能エネルギーの活用
  • 製品におけるCO2排出削減*2
    製品の省エネ性向上
    部品点数の削減、梱包材の削減
  • 企業のカーボンニュートラル化を促進する業界活動への参画
    一般社団法人電子情報技術産業協会のGreen x Digital コンソーシアム参画
内燃機関車から電気自動車への転換 短期 内燃機関関連の金属加工部品の需要減少
  • 電気自動車(EV)向け小型工作機械の開発*3
    高い省エネ性能と生産性を誇るSPEEDIOシリーズの新製品開発
サーキュラーエコノミー
  • 環境規制の強化
  • 市場要請の高まり
- 短期~
中期
通信・プリンティング機器分野における環境規制ならびに市場要請への対応遅れによる販売機会損失
  • 廃棄物削減と新規資源削減*4
    製品へのリサイクル材やリユース材の使用
    梱包材へのリサイクル可能な緩衝材の使用
  • 将来規制動向の調査
    欧州における環境規制動向の情報収集と製品開発への反映

物理リスク(急性)

外部環境の変化 財務
影響
想定
時期
ブラザーグループへの影響 対応策
サイクロン、洪水などの異常気象の激甚化 短期~
長期
洪水の影響による生産停止
  • 一時的な生産停止に耐えうる部品在庫の確保
  • 複数拠点生産によるリスク対応の実施(一部モデル)
  • 部品調達先およびその上流サプライヤーの戦略的検討

注) 財務影響度 小:10億円以内/中:10億円~100億円/大:100億円超/-:今後検討予定
想定時期 短期:10年以内/中期:10年~50年/長期:50年超

気候関連機会

機会(製品とサービス)

外部環境の変化 ブラザーグループへの影響 対応
カーボンニュートラル
顧客のCO2排出量削減ニーズの増加 省エネ性の高い製品や低炭素製品の需要増加
  • 国際エネルギースタープログラム基準適合製品の販売拡大
  • 将来環境技術情報収集のための投資
    未来創生3号ファンド、WiL Ventures IIIに出資
内燃機関車から電気自動車への転換 電気自動車関連部品などの新たな加工ワークの増加による工作機械の需要増加
  • EV向け小型工作機械の開発*3
    高い省エネ性能と生産性を誇るSPEEDIOシリーズの新製品開発
サーキュラーエコノミー 循環経済型ビジネス拡大による事業機会獲得
  • サブスクリプションを利用するなどの循環型ビジネスの拡大*4
  1. 事業所におけるCO2排出削減の取り組みはこちら
  2. 製品におけるCO2排出削減の取り組みはこちら
  3. 内燃機関から電気自動車(EV)への転換に対する取り組みはこちら(生産性向上とCO2の削減を両立する工作機械)
  4. 資源循環・廃棄物削減の取り組みはこちら

TCFD提言:リスク管理

気候変動や資源枯渇、環境汚染、生態系破壊といった社会的な重要課題をブラザーグループの事業上のリスクとして捉え、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」にて長期的かつ継続的にその解決に取り組むことを明確にしています。
ブラザーグループでは、2022年度に気候変動対応を含むサステナビリティの推進とリスク管理を目的に、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設立し、重要な気候変動のリスクと機会を識別、評価し、適切な対応指示を行っています。サステナビリティ委員会の下部組織として設けられた気候変動対応分科会で、気候変動などの重要な問題を特定し、適切な対策を決定し、実行しています。さらに、気候変動対策としての野心的な目標を設定し、進捗状況を定期的にモニタリングしています。

TCFD提言:指標と目標

「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」のCO2排出削減では、2050年度までにあらゆる事業活動のカーボンニュートラルとバリューチェーン全体のCO2排出最小化を目指すことを掲げています。また、そのマイルストーンとなる「2030年度中期目標」では、2030年度までにブラザーグループから排出するCO2(スコープ1・2)を2015年度比で65%削減、バリューチェーンの中でも特に排出量の多い製品の調達・使用・廃棄の各ステージで排出されるCO2(スコープ3のC1・11・12)を2015年度比で30%削減することを目標としています。
このCO2排出削減に関する「2030年度中期目標」は、国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)」による「1.5°C目標」の認定を取得しています。
また、同じく「ブラザーグループ環境ビジョン2050」の資源循環では2050年に向けて、ブラザーグループは、資源循環の最大化により、資源の持続可能な利用と廃棄物による環境負荷の最小化を目指すことを掲げています。
そのマイルストーンとなる「2030年度中期目標」では循環経済型ビジネスの拡大と資源の再生利用により、2030年度までに製品に投入する新規資源率を65%以下とすることを目標として掲げています。
さらに「2030年度中期目標」達成に向けたマイルストーンとして「CS B2024」ならびに「ブラザーグループ中期環境行動計画2024」において2024年度までの短期目標を設定し、そこから単年度の目標に落とし込み、進捗と結果を気候変動対応分科会およびサステナビリティ委員会に報告しています。

課題 2024年度目標 進捗
CO2削減 [スコープ1,2]
47%削減(2015年度比)
(2022~2024年度の3年間で9%を削減)
電力使用の効率化や太陽光発電の導入など、自助努力としての省エネ・創エネ施策を実施。その上で必要量のCO2フリー電力を調達し、目標達成に向けて順調に推移。
[スコープ3]
自助努力による15万t*削減対策の実施
新製品で小型化、省エネ性向上を中心とした施策を計画通り実施。また取引先と協業し、部品製造時のCO2排出量を削減する新たな施策を実施。
資源循環 製品に投入する新規資源率81%以下 新製品を中心にリサイクル材の使用拡大やリサイクル可能な緩衝材への変更などの施策を実施し、2024年目標に向けて順調に推移。
  • 2021年度の事業活動と比較して、2024年度までに新たに実施した製品環境対応施策によって削減できたCO2排出量の総量。例:製品の小型、軽量化、再生材料の使用量拡大、待機時の消費電力削減など。

CO2削減進捗

2023年度までの進捗

「スコープ1・2」の2019年度から2023年度の実績(グラフ)

「スコープ3」のカテゴリ1・11・12の2019年度から2023年度の実績(グラフ)

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