サステナビリティ

社会(S)

人財育成

サステナビリティ

  • 4 質の高い教育をみんなに
  • 8 働きがいも経済成長も
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 12 つくる責任つかう責任

「人事ポリシー」の策定

近年、グローバル化はもとより、社会の価値観やニーズの変化など、従業員や組織を取り巻く環境が大きく変化しています。
このような状況においても、"At your side."の精神で、お客様に選ばれる会社であり続けること、そして従業員がより意欲をもって働くことができる企業風土を醸成することが重要です。これらを成し遂げるために、ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)では、2023年度に「人事ポリシー」を策定しました。本人事ポリシーのもと、中期戦略「CS B2024」で掲げた「従業員のチャレンジ行動促進」と「従業員エンゲージメントの向上」に向けた活動を推進します。そして、ブラザーグループビジョン「At your side2030」を実現し、さらにその先の未来永劫の繁栄を目指します。また、従業員が能力を最大限に発揮できるように、新たな人事制度をはじめとする人財育成や各種人事施策の展開を進めています。

人事ポリシー

新たな人事制度の導入

人事ポリシーの実現に向けた制度改革

ブラザー工業は、「人事ポリシー」に基づき、多様な一人ひとりが常に挑戦することで、組織と人が一体となり、未来永劫の繁栄を実現することが重要と考えています。この持続的成長を推進するために、ライフサイクルの視点から従業員を4つの世代に分類し、世代ごとにアプローチしています。

階層ごとの目指す姿

「若手層」には役割に基づく育成と早期抜擢、「ミドル層」にはより柔軟な配置と報酬、「マネジメント層」には役割に基づく貢献と能力強化、そして「シニア層」には新たな役割での成果、価値の創出を実現できる制度となるように改革を進めています。

この改革のもと、ブラザー工業の全従業員が能力を発揮し、中期戦略「CS B2024」で掲げた「従業員のチャレンジ行動促進」と「従業員エンゲージメントの向上」を実現するため、2023年度に人事制度を改定しました。この人事制度では、従来の勤続年数を重視した職能資格制度*1から、担う役割を重視する役割等級制度*2へと変更しています。また、役割等級制度への変更に伴い、評価制度、報酬制度も見直しています。

役割等級制度の説明

  1. 経験年数を重視し、従業員個人の保有能力や発揮能力に基づき従業員を格付けする制度
  2. 担う役割(役職)の重さに基づき、等級・処遇を決定する制度

役割等級制度・報酬制度

ブラザー工業は、2023年4月、職能資格制度から役割等級制度へ移行し、それに伴い報酬制度も変更しました。この新制度では、従業員の担う役割を重視し、その役割に応じて報酬を決定します。

従来の職能資格制度は、勤続年数が上がると報酬も上がる仕組みで、若手層が高い成果を出しても報酬に反映させづらく、昇格には一定の在籍期間が必要といった課題もありました。
新しく導入した役割等級制度では、勤続年数や年齢などに関わらず、担う役割に応じて等級・報酬が決定されます。これにより、年功序列の要素が減少し、高い成果・貢献を創出する人財がより報われる仕組みとなっています。また、高い成果や貢献をもたらす若手層の、昇格時に必要な滞留年数を短縮することで、優れた人財の早期抜擢を促進します。
本制度のもと、実力に応じた役割の付与と人財の最適配置を促進することで、人事ポリシーに掲げた「真の自律と挑戦」を後押しするとともに、「成果と貢献に正しく報いる」ことで、組織力を最大化していきます。

評価制度

ブラザー工業は、上記の役割等級制度への移行に伴い、評価制度も見直しました。新しい評価制度のもと、人事ポリシーに掲げた「成果と貢献に正しく報いる」を実現します。

2022年度にブラザー工業で実施した「従業員エンゲージメント調査」の結果から、従業員のエンゲージメントを高める要素として、「目標設定」が重要であることを再認識しました。そこで、ブラザー工業では、新しい評価制度の導入に加えて2023年度から、従業員のチャレンジをより促進することができる「目標設定」の仕組みに変更しました。
また、役職、役割ごとの「役割定義表」を新たに作成、公開し、「目標設定と人事評価の考え方」に関する動画配信やe-ラーニングの実施、評価者・被評価者向けの研修実施などにより、全ての従業員が新しい評価制度の理解を深め、共通認識をもって目標設定や評価ができるような活動を継続して行っています。

評価の決定後は、評価結果をフィードバックし、各自の強みや課題などを確認することで翌年度の目標設定につなげています。また、評価の結果は、給与と賞与に反映することで、透明性の高い報酬制度となっています。このようなオープンな制度により、上司と部下がお互いの理解と納得性を高めることで、「成果と貢献に正しく報いる」と同時に、従業員の「真の自律と挑戦」を後押ししています。

段階的な65歳定年延長

上記の役割に基づく人事制度が浸透した上で、2029年度に満60歳になる従業員から「65歳定年」に移行します。この定年延長は、2026年度から段階的に実施されます。また、定年延長に伴い、ブラザーシニアスタッフ制度も改定し、シニア層のさらなる挑戦や活躍を推進します。
本移行により、65歳まで報酬を一律的に下げることのない仕組みとなることで、長年にわたり培われた経験・知見・スキルを生かし高い成果を創出するシニア層に対して、その貢献に正しく報いることができると考えています。

ブラザー工業におけるシニア層の活躍推進の詳細は、下記をご覧ください。

多様性の尊重-シニア層の活躍推進(ブラザーシニアスタッフ制度)

多様な働き方を支援する制度の導入と施策の実施

ブラザー工業では、人事ポリシーで掲げた「多様性の尊重」に向けて、多様な働き方や仕事と生活の両立を支援する各種制度を導入しています。

詳細は、下記をご覧ください。

教育体系・研修内容

ブラザー工業は従業員一人ひとりが自分らしく成長し、自らのスキルや強みを生かしながら自律的なキャリアを築くことができるよう支援を行っています。例えば、節目の年齢でこれまでの経験を振り返り、なりたい姿を描くキャリアオーナーシッププログラム、さまざまなスキルを身につけるために希望者が参加できる公開研修、若手従業員を対象に早期に海外経験を積むトレーニー派遣などを実施しています。また、自己啓発の機会として通信教育メニューを提供し、決められた講座を修了した際には全額または半額の受講費用を補助しています。

さらに、新任上級職(管理職)向けには、マネジメント研修に加え、ハラスメント、人権、コンプライアンスなど20以上の研修プログラムを用意しています。ほかにも、従業員の成長促進を目的として、上司と部下が1対1で対話を行う1on1を2017年から導入し、現在は従業員の8割が実施しています。

自己啓発プログラム (ブラザー工業)
カテゴリー コース数
語学 約120コース
ビジネススキル・知識 約110コース
IT・パソコンスキル 約30コース
資格取得 約30コース
技術スキル・知識 約10コース
新任上級職(管理職)向け研修詳細(ブラザー工業)
目的
  • 上級職として経営視点に立った役割の認識
  • 上級職としての役割上必要となる「考え方」「知識・スキル」の理解と習得
ゴール
  • 組織あるいは専門技術のリーダーとして、常に自らを高める意識を持つ
  • 役割を果たすための知識が身についている
  • 後進の指導に対する理解を深め、実践につなげる準備ができている
プログラム
  • 全23コース
研修時間
  • 約46時間 / 全15日
主な新任上級職向け研修(ブラザー工業)
研修名 ねらい 内容
マネジメント研修
  • 上級職としての基礎知識、マネジメント手法を理解
  • マネージャーとしての役割理解
  • 基礎研修
  • 人財育成・組織開発研修

    など

ハラスメント研修
  • 上級職としてハラスメントの基礎知識を習得する
  • ハラスメントの概要の説明
  • 上級職として注意することの説明
  • ハラスメントの具体的実例の紹介
  • ハラスメント予防に効果的である実践的な技法の紹介(具体的な実例を踏まえた効果的なコミュニケーションの紹介など)
コンプライアンス研修
  • 上級職の立場からコンプライアンスについて考える
  • コンプライアンスの概要の説明
  • 職場でのコンプライアンス違反防止策の説明
  • 内部通報相談窓口のご案内、相談・通報事例の紹介
1on1部下育成研修
  • 組織のパフォーマンスを向上させるため、自分自身のあり方や関わり方を見直し、部下の育成に有効な関わり方およびコーチングスキルを身に付ける
  • 部下の価値観、モチベーションの源泉を理解し、部下の強みを強化するための1on1の進め方説明
  • 信頼関係の構築方法の説明
人権研修
  • 人権とはどのようなものか、人権を学んで得られるものは何かについて学ぶ
  • 人権とは何か:基本的人権の理解、差別について
  • ビジネスと人権:ビジネスを続ける上で、人権について考えるべきこと
社長・会長と語る会
  • 「ブラザーDNA」の継承を理解し、意識を高める
  • 直接対話を通じて、マネジメントの重要性、グループ戦略・リーダーシップへの理解を深める
  • 新任上級職から相談したいこと、聞きたいことなどを語り、社長からフィードバックのコメントを行う
  • グローバルリーダーとしての求められる資質について会長から説明

従業員の能力開発に関する研修・教育の実績

従業員の能力開発に関する研修・教育の実績(ブラザー工業)
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
総時間*1 99,667時間 104,758時間 104,450時間 166,698時間 118,610時間
研修の種類 階層別研修、新任上級職研修、公開研修、トレーニー研修など*2
従業員一人における平均金額*3 110,880円 70,746円 78,837円 106,025円 125,241円
従業員一人における平均日数 1.09日 1.15日 1.13日 1.79日 1.27日
従業員一人における平均時間 26.23時間 27.55時間 27.01時間 42.85時間 30.59時間
  1. 人事部・製造企画部主催の全社に向けた研修(OFFJT)のみ
  2. トレーニー研修については、2020年度~2021年度は新型コロナウイルスの影響で中断、2022年度から段階的に再開
  3. 人事部・製造企画部主催の研修に加え、各部門で実施している研修・教育を含む(2019年度から2022年度は、過去の掲載内容から、各部門で実施している教育・研修を含めて算出し直した金額に更新)

グローバルな課題に対応できる人財を育成

さまざまな経験によって、広い視野と高い専門性を得る

ブラザーグループは、広い視野と高い専門性を持ち、グローバルな課題に対応できる人財を育成するため、ブラザー工業と海外のグループ会社の間で人財を派遣する研修「トレーニー制度」を2008年度から実施しています。
この研修は、人財育成計画に基づいて選出された若手の従業員が対象で、派遣期間は3カ月から1年とし、派遣元と派遣先で事前に立案した研修計画にそったOJT(On the Job Training)を行います。トレーニー制度の開始当初は自身の専門業務に関係する研修が中心でしたが、2015年度からは、開発者が営業担当者と一緒にお客様を訪問し、ニーズや使用状況をお客様から直接聞くなど、専門性とは異なる経験を通じて新たな知見を得る研修も実施しています。

また、2018年度からは、20代の技術者が1カ月間、海外の生産・修理現場で学ぶ短期派遣も開始しました。この短期派遣制度は、開発者や技術者が、普段の担当範囲とは異なる業務を学ぶことで海外の生産現場と連携を高めたり、お客様を直接訪問することで真の課題を学んだりするなど視野を広げることのできる取り組みとなっています。2023年度には、ブラザー工業からドイツや台湾などのグループ会社に26人、フィリピンや中国などのグループ会社からブラザー工業に14人の従業員を派遣しました。
ブラザーグループは、これからも優れた価値を提供できるグローバルな人財の育成に取り組んでいきます。

ブラザー工業株式会社 プリンティング・アンド・ソリューションズ事業 ラベリングソリューション推進部 辻井 綾乃

トレーニー制度利用者の声①
ブラザー工業(日本)→ブラザーインターナショナル(ヨーロッパ)Ltd.(イギリス)
~お客様を訪問することでお客様の真の課題を知る~

ブラザー工業株式会社 プリンティング・アンド・ソリューションズ事業
ラベリングソリューション推進部
辻井 綾乃

私はイギリスにあるプリンティング・アンド・ソリューションズ事業の欧州販売統括会社にトレーニーとして参加しました。イギリス・フランス・ドイツでブラザーの業務用ラベルプリンターを使用されているお客様を訪問し、実際の製品使用方法をお伺いするとともに、お客様が抱えられている課題についてヒアリングを行いました。最初は、言葉の壁などもあり、お客様の本音を伺うことに苦労しましたが、はじめに訪問の目的を明確にするなどお客様に自分の思いを直接お伝えすることで、徐々にさまざまな情報をご提供いただけるようになりました。最終的には、ヒアリングを通じて、お客様自身も認識されていない課題まで把握することができるようになり、お客様からは「我々に向き合ってくれてうれしかった」という声をいただけました。
この経験から今後は、お客様と向き合うこと、そしてお客様が抱える課題の本質を知ることを意識し、その課題を開発者にも直接自ら伝えることで、お客様にとっての真の価値を提供することを目指していきたいと思いました。

ブラザーインダストリーズ(ベトナム)Ltd. 総務部 安全防災環境課 Dien PhamHuu

トレーニー制度利用者の声②
ブラザーインダストリーズ(ベトナム)Ltd.(以下、BIVN)→ブラザー工業(日本)
~日本の安全衛生に対する考え方・取り組みを学ぶ~

BIVN 総務部 安全防災環境課
Dien PhamHuu

私は、ベトナムの生産拠点であるBIVNからブラザー工業に派遣されました。ブラザー工業では、瑞穂工場や星崎工場で安全衛生に関する取り組みを実際に体験し、さまざまな知識や技術を学びました。具体的には、生産現場における協働ロボットの動作確認やリスクアセスメントの実施を通じて、作業の効率性と安全性を両立させる方法を学びました。さらに、ブラザー工業の生産現場における安全衛生パトロールや消火訓練への参加、AED装置の使い方の習得を通じて安全衛生に関する考え方をより深く理解することができました。
そのほかにも、90以上の取り組みを経験したことで、ブラザー工業の安全衛生に対する高い意識に触れることができ、自身の安全衛生への理解と意識がさらに向上したと感じています。
BIVNで働く従業員の安全意識をさらに高めるため、今回の研修で学んだ日本の安全衛生防災活動をBIVNでも展開していきたいと思います。

DX人財の育成

ブラザーグループは、中期戦略「CS B2024」で重点テーマとして掲げた「持続可能な未来に向けた経営基盤の変革」の中で、「各事業のビジネスモデルの変革」や「強靭かつ持続可能なサプライチェーンを構築」するために、デジタル技術の活用を推進しています。また、「従業員のチャレンジ行動を促進」するため、DX*を担う人財の育成も強化しています。
ブラザーグループのDX戦略は、1.ビジネスDX(各事業のビジネスモデル変革)、2.オペレーショナルDX(強靭かつ持続可能なサプライチェーンの構築)、3.DX基盤構築(デジタルの徹底活用と人財育成)の3つの柱で構成され、その基盤構築としてDX人財の継続的な育成を全社で推進しています。DX人財の育成は、「DXコア人財」「デジタル活用推進リーダー」「全従業員」の3つの階層に分けて行っています。

DX戦略の3つの柱とDX人財育成

DX戦略の3つの柱とDX人財育成

  • デジタルトランスフォーメーションの略。高速インターネットやクラウドサービス、AI(人工知能)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活を変革していくこと

DXコア人財:デジタル技術のエキスパートとして、各事業のビジネスDXを牽引

ブラザー工業は、デジタル技術のエキスパートとして、各事業のDXを牽引する「DXコア人財」の育成を行っています。2022年度は、求める人財を「ビジネスプランナー」「データアナリスト」「データアーキテクト」「クラウドエンジニア」「AIエンジニア」の5つのカテゴリーに分類し、それぞれのカリキュラムに基づき教育を実施しました。2023年度は、「デジタルマーケター」「製品情報セキュリティスペシャリスト」の2カテゴリーを追加し、計7カテゴリーに分類して育成に取り組みました。

2022年度からの3カ年では、200人規模の「DXコア人財」育成を計画しています。初年度となる2022年度は、各事業と本社各部門の従業員に対して研修を行い、147人が修了しました。本研修は2023年度も継続して行い、96人が受講しています。2024年9月に研修が終了すると、目標としている「DXコア人財200人育成」が、1年前倒しで達成できる見込みです。また、2022年度に研修を受講した従業員のうち約80%が、DXに関わる業務に従事しています。

デジタル活用推進リーダー:各部門における業務の効率化・デジタル化を牽引

ブラザー工業の各部門から1人ずつ、業務の効率化・デジタル化を牽引する「デジタル活用推進リーダー」を選出し、育成を行っています。2022年度は、「問題発見力」に関する研修を行い、28人の従業員が参加しました。2023年度は、引き続き「問題発見力」に関する研修を実施し、2022年度に未実施であった26部門から26人の従業員が参加しました。

全従業員:DXデジタルの基礎知識を有し、業務のデジタル化・効率化に活用

デジタル活用人財の育成

ブラザー工業では、DX人財育成の基盤として「デジタル活用人財育成」を推進、より多くの従業員がデジタル技術を活用し価値創造ができる人財となるよう、外部の教育団体と連携して支援を行っています。

2022年度の「デジタル活用人財育成」では、すでに基礎知識を有する部門を除く、ブラザー工業の全従業員を対象として、e-ラーニングを実施しました。e-ラーニング内の動画では、「業務の自動化・効率化」「データ活用の検討および実施」に役立つ多くのツールやプログラムが紹介され、約3,000人の従業員が受講しました。

2023年度には、新入社員や経験者採用者に対してDXの基礎研修を実施し、158人が受講しました。

AIを主体的に活用できる人財育成の推進 「AI活用プロジェクト」

ブラザー工業では、2018年に社長直轄の「業務効率化プロジェクト」を立ち上げ、RPA*やAI(人工知能)などのIT活用による定型業務の自動化・効率化を全社的に推進しています。その取り組みの1つである「AI活用プロジェクト」では、「AI Everywhere.」を合言葉に、ソフトウエア開発部門が中心となり、従業員一人ひとりが主体的にAIを活用できるよう支援しています。このプロジェクトでは、自社で独自にカリキュラムを作成した社内AI研修の実施や専用イントラサイトによる最新のAI技術、社内でのAI活用事例の共有、現場における課題解決のためのAI活用支援など、幅広く取り組んでいます。

専用イントラサイト トップ画面 専用イントラサイト トップ画面

社内AI研修では、「各部門に1名以上AI人財を配置する」という目標のもと、基礎知識の有無や所属部署を問わず参加できる初心者向けのプログラミング講座も設けています。受講者からは「何も分からなかったAIの活用方法を知るきっかけとなるよい研修だった」「演習で実際にプログラミングを体験することで、自分が取り組む際のイメージができたのが良かった」と好評で、実際に受講終了者による各現場でのAI活用も着実に広がっています。

また、製造現場におけるAI活用事例として、インクジェットプリンターヘッドのノズル穴形状確認作業の無人化・検査精度の高度化や、工業用ミシンの出荷前検査の自動化などを実現しました。プロジェクトメンバーが、課題の明確化、AIシステム活用のための膨大なデータ収集と学習作業、システムの試験運用などを各部門の検査担当者とともに取り組むことで、検査担当者はAI知識を深めることができ、製造現場でのAI活用につながりました。

加えて、プロジェクト初期段階においては、円滑なプロジェクト運営のため「AI Lean Canvas」の記入を行っています。AI Lean Canvasとは、現状の課題解決に向けて行いたいことがAI向きか否かをA4用紙1枚、1時間で迅速かつ俯瞰的に判断できる有用なフレームワークで、AI初心者でも簡単に記述をすることができます。このAI Lean Canvasの活用により、案件がAI向きかどうかを担当者のAI習熟度に関わらず簡単に判断でき、実証実験および実装へと迅速に移行できるようになりました。

そのほかにも、社内のコミュニケーションツールであるTeams上に、AI活用に関する情報を共有するためのチャネル「AI活用共有コミュ」を開設し、約600人の従業員が参加しています。このチャネルでは、従業員が「最新のAI技術」や「社内外でのAI活用事例」など、AI活用に関する情報を日々投稿し、活発な議論を行っています。これらの議論を通して、各部門が抱えている課題の解決や、新たなAI活用プロジェクトの創出など、社内のAI活用促進につなげています。

  • Robotic Process Automationの略。事務業務のロボットによる自動化。(ルーティン化できる複数のアプリケーション操作を人に代わってロボットが実施)

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