環境汚染に伴うリスクと機会
ブラザーグループは、「ブラザーグループ環境方針」の中で、製品のライフサイクル(製品の開発・設計、部品や材料の調達、生産、包装・物流、お客様による使用、回収・リサイクル)を通じて、活動する国や地域の法規制順守や環境汚染の予防に取り組んでいます。さらに、継続的な環境負荷の低減を約束し、環境汚染のリスクと機会を以下のように捉え、ISO 14001の活動などを通じて予防を図っています。
リスク |
|
---|---|
機会 |
|
化学物質の管理と削減
国内事業所の主な取り組み
ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)では、1998年に一般社団法人日本経済団体連合会によるPRTR制度の導入に伴う先行調査に参加し、事業所で使用されている化学物質の移動・排出量を1997年度分から報告しています。
ブラザー工業では、「PCB廃棄物の適正な処理の促進に関する特別措置法」に基づき、2008年から、適正保管をしながら計画的に廃棄処分委託を行ってきました。その後、古い倉庫やエレベーターなどから新たに低濃度PCB含有電気機器などが発見されたため、休止設備なども含めた再調査を行い2023年度までに発見された全てのPCB廃棄物の処分を完了しています。
フロンについては、「フロン排出抑制法」の施行(2015年4月)に伴い、2015年から一般財団法人日本冷媒・環境保全機構の「冷媒管理システム」を用いて空調設備を管理しています。このシステムにより、約1,600台に及ぶブラザー工業の国内空調機器の稼働状況が一元的に把握できています。2023年度は報告義務を超える漏えいは発生していません。
海外拠点の主な取り組み
海外の生産拠点では、ISO 14001に基づいて地域ごとの法規制を調査・把握し、管理体制を構築して適切な管理を実施しています。また、生産に関わる部品・材料・副資材は、お取引先と連携して「ブラザーグループ グリーン調達システム」を運用し、有害化学物質の混入を防止しています。
大気・水質・土壌など汚染防止
ブラザーグループでは、環境事故の未然防止を第一優先とし、対象となる施設・工程を見直し、適時汚染の可能性が低い方式への転換を図っています。また、既存の施設管理は、各拠点が取得しているISO 14001の運用により自主管理値を設定・順守し、汚染防止を図っています。
大気汚染の未然防止
ブラザーグループでは、化石燃料を直接燃焼するタイプのボイラーや暖房機を、電化、またはCO2排出係数の低い都市ガスに変更することで環境への負荷を軽減し、大気汚染防止に努めています。
ブラザー工業では、従業員寮を含め全事業所で大気汚染に関わる特定施設の重油ボイラーを廃止しています。海外の生産拠点でも、従業員寮に太陽光温水器やヒートポンプ設備を導入し、重油ボイラーの使用を大幅に削減しています。また、中国華南地区にある兄弟高科技(深圳)有限公司(以下、BTSL)で使用する電力は、重油による自家発電を廃止し、市が供給する電力に切り替えました。これらの取り組みにより、大気汚染・CO2排出による温暖化・土壌や地下水汚染などのリスクを軽減しています。
VOC(揮発性有機化合物)の排出削減については、ブラザー工業の刈谷工場に設置した塗工施設に1994年から排気ガス処理設備を導入し、VOCの排出抑制と悪臭の発生を防止しています。あわせて、有機溶剤の含有率が低い材料への転換や、使用量削減などの対策も実施しています。BTSLにおいても樹脂の成形工程や実装基板の製造工程から排出されるVOCの処理設備を2015年に設置するとともに、大気汚染防止に努めています。
兄弟機械(西安)有限公司においては、2021年に排気ガス処理設備を更新し、2022年度に高温処理工程からの排ガスに含まれる汚染因子をより効率的に除去するため、VOC処理設備に接続する改良を行うなど、大気汚染防止に継続的に取り組んでいます。
なお2023年度は、中国の生産拠点にて、VOC排出に関する当局の立ち入りが行われ、法規制で定める設備要件への不適合箇所が見つかり、行政罰による支払いが発生しました。即時対応を行い、恒久対策がすでに完了しております。
水質汚染の未然防止
水質汚濁防止については、以下の取り組みを実施しています。
ブラザー工業では、2011年度に最新式の膜分離活性汚泥方式を採用した排水処理施設を刈谷工場に設置しました。
海外の生産拠点では、ブラザーインダストリーズ(サイゴン)Ltd.の部品洗浄排水、兄弟機械(西安)有限公司の塗装前処理排水、台弟工業股份有限公司の塗装前処理排水を対象に、排水処理施設を設けました。2012年に工場を増設したブラザーインダストリーズ(ベトナム)Ltd.では、排水処理施設を生物膜方式の施設に更新し処理能力を向上させることで、排水の環境負荷数値を大きく低減しました。
下水道のインフラ整備がない事業所では、生活排水の浄化設備および後処理設備を設置しています。これらの施設もISO 14001の施設管理手順により地域の基準を順守しています。しかしながら2022年度は、海外の一つの生産拠点において、所在国の合否基準が厳しくなったため、ノルマルヘキサン抽出物が新基準値の1.5倍になりました。新基準値をクリアするため、グリーストラップのキャパシティー拡張や清掃頻度を増やすなどの対策を実施し、監視を継続しています。
緊急事態への対応については、下水や公共水域への流入・土壌への浸透を想定した緊急事態訓練を定期的に行っています。さらに、排水処理施設へCOD(化学的酸素要求量)を常時監視するシステムの導入、食堂排水へオイルトラップを設置するなどの対策を施し、万が一の油流出の事態に備えています。また、定期的にBOD(生物化学的酸素要求量)や、ノルマルヘキサン抽出物質(水中の油分などを表す指標)などの測定監視を行っています。
土壌汚染対策
ブラザー工業では、過去に工場内で使用していた有機塩素系化合物、有害重金属による土壌・地下水の汚染状況について、1997年から調査を開始しました。汚染を確認した区域では、汚染物質の拡散防止対策ならびに浄化を施すとともに管轄する自治体に報告しています。自社所有地の売却および改変に当たっては、法律の基準に従い土壌調査を実施しています。
2023年度は、瑞穂工場内で新社屋の建設工事を行うにあたり、土壌汚染対策法に基づき土壌調査を実施した所、瑞穂工場内の一部敷地から、指定基準を超える「ふっ素及びその化合物」「鉛及びその化合物」が検出されました。「ふっ素及びその化合物」「鉛及びその化合物」については、瑞穂工場内の一部区域で使用されておりますが、事故や漏えい、廃棄などは確認されておりません。なお、汚染が判明した場所は、拡散防止措置が実施されており、飛散や雨水などによる汚染土壌の拡散の恐れはありません。今後は、名古屋市の指導に従い、汚染土壌による汚染の拡散防止などの対応を講じるなど、適切に対処していきます。
騒音・振動・悪臭の発生防止
ブラザー工業では、近隣の住宅・学校・通行人への配慮として、騒音・振動・悪臭の発生防止に取り組んでいます。発生源の移設、転換することで低減を行い、基準値を超えるものに対しては適切に処理を行っています。より厳しい自主基準を設けて監視を継続することで、騒音・振動・悪臭の発生を未然に予防しています。
水質汚濁負荷量
年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|---|
水質汚濁負荷量(t) | BOD | 25.0 | 37.8 | 29.3 | 31.2 | 19.5 |
COD | 46.1 | 95.3 | 68.4 | 48.1 | 36.8 | |
ノルマルヘキサン抽出物 | 0.5 | 0.7 | 0.5 | 1.5 | 0.5 | |
SS | 13.8 | 29.4 | 12.0 | 15.6 | 6.6 |
対象拠点は、マテリアルバランス [PDF/1.1MB] 6ページをご覧ください。