ビジネスとして社会課題の解決や地域活性化に取り組む若者を支援
「東海若手起業塾」の立ち上げに参画し、継続して起業家支援をサポート
ブラザー工業株式会社(以下、ブラザー工業)は、本社のある東海地区で社会課題の解決や地域活性化にビジネスとして取り組む若い社会起業家を支援する「東海若手起業塾」の立ち上げに参画し、その活動への協賛を2008年に開始しました。
起業塾では、起業家の事業戦略立案やサービス開発の支援など事業を成長軌道に乗せるための取り組みをしており、2023年度までの16年間で、合計68人の介護や福祉、多文化共生、子どもの学び場づくり、子育て支援、町づくりなどに携わる起業家を支援してきました。
従業員がプロボノ*1として社会課題解決に参画できる仕組みを構築
2012年から毎年、ブラザー工業の従業員が、東海若手起業塾の塾生に伴走するプロボノとして参加しています。
プロボノとして参画した従業員は、6カ月間で合計50時間の就業時間を活動にあてることが認められており、就業時間以外の時間も使いながら、提供するサービスの価値を向上させる戦略の立案、ターゲットの絞り込み、市場調査のサポート、販売計画の策定など起業家に対して支援を行います。
従業員がプロボノとして参画することで、自身の業務で培ったスキルや経験を生かしたサポートができるだけでなく、起業家のサポートを通じてアントレプレナーシップ*2を学ぶこともでき、従業員の学びと成長の機会拡充や事業を通じた社会課題解決の促進につながっています。
2023年度の取り組み
2023年度は、選考会を通じて選ばれた4人が16期生として起業塾に参加し、ブラザー工業からはプロボノとして4人の従業員が参加しました。塾生の一人は、総合型スポーツクラブの運営や教育を通して、子どもの「できるんだ」という自信を育み、課題に挑める人を育てる事業を目指していました。今回、プロボノから受けた半年間のサポートなどを経て、事業のビジョンや戦略をより具体化させていきました。
2024年3月に開催された最終報告会では、今後の事業展開や目指すビジョンなどが塾生から発表され、プロボノとして参画した従業員からは、「起業家の支援を通じて、視座が高まった」などの報告がされました。
2023年度はほかにも、社内におけるプロボノ経験者のネットワーク構築と起業家たちのコミュニティー強化を目指し、過去の東海若手起業塾生とプロボノとして参画した従業員などを対象とした「ギャザリングDAY」を開催しました。「ギャザリングDAY」では、これまでの塾生たちから、現在の事業内容や活動状況、その課題が共有され、参加者全員で課題への対策が検討されました。参加者たちは、「ギャザリングDAY」での相談や検討を通じてこれまでの経験や能力を共有することができ、今後の自身の活動につなげる良い機会となりました。
ブラザー工業は、これからも、若手起業家を支援する起業塾への協賛を通じて、社会課題の解決や地域の活性化に貢献していきます。さらに、従業員のプロボノ活動によって、従業員の学びと成長の機会を拡充するとともに、事業を通じた社会課題の解決を促進していきます。
- 従業員が、会社の業務で培ったスキルを、それぞれの起業家の支援に生かす活動のこと
- 新しい事業を創造し、リスクに挑戦する姿勢のこと
南アフリカ共和国で、恵まれない若者たちの就労を支援
若者の雇用を促進するプログラムに協賛し、職業訓練を実施
南アフリカ共和国では、アファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)*の一つであるBroad-Based Black Economic Empowerment(以下 B-BBEE)政策が行われています。B-BBEEとは、歴史的に不利な立場に置かれている南アフリカ人の経済力強化政策で、不公平解消に向けた企業の取り組みや貢献度を要素別にスコア化し、スコアに応じて格付けをするものです。
南アフリカの販売拠点であるブラザーインターナショナル(南アフリカ) (Pty) Ltd. (以下、BI(南ア))は、B-BBEEの一環で若者の雇用を促進するプログラムに協賛し、就職の機会に恵まれない18歳から35歳までの若者に、BI(南ア)のオフィスやさまざまな施設で12カ月間、職業訓練の機会を提供しています。また、訓練後には一部の若者を正社員として雇用し、継続して能力開発を行っています。
2023年度にBI(南ア)で実施した職業訓練では、14人の若者を受け入れ財務や経営管理などの業務経験やトレーニングの機会を提供し、そのうち5人を正社員として雇用しました。12カ月間以上の継続した勤務経験があると他の就職先を見つけられる可能性が80%になる、という調査結果があり、恵まれない若者に技能開発や雇用の機会を提供することで、南アフリカにおける社会経済の発展に貢献しています。
加えて、BI(南ア)では、歴史的に不利な立場に置かれた南アフリカ人の管理職登用も積極的に進めています。その比率は、B-BBEEのスコアで目標に定められた60%に対し、BI(南ア)では33%となっています。
ブラザーグループは今後も、歴史的に不利な立場に置かれている南アフリカ人の処遇を改善することで、社会課題の解決に貢献していきます。
- 女性や人種的マイノリティーなど過去における社会的・構造的な差別によって、現在不利益を被っている人々に対して、特別に雇用や教育の機会などを提供することで機会均等の実現を目指した措置のこと
放課後児童クラブ(学童保育所)へ通う子ども向け環境イベント「ブラザーアースキッズアカデミー」開催
2018年度から、学童保育所向け環境イベント「ブラザーアースキッズアカデミー」を実施 ~夏休みに学童保育所で過ごす子どもたちに学びの場を提供~
「ブラザーアースキッズアカデミー」は、学童保育所で夏休みを過ごす子どもたちに対して2018年度から実施しているイベントで、工作を通じて環境問題について学ぶ機会を提供しています。イベントでは、「絶滅危惧動物図鑑」の制作を通じて、絶滅危惧種が増加する原因を調べ、その原因の一つである地球温暖化の仕組みや温暖化防止につながる取り組みについて学ぶプログラムを実施しています。
本イベントは、2018年度・2019年度にブラザーミュージアムで開催した後、2020年度・2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインイベントとして開催。2022年度は一部規制が緩和されたため、オンラインイベント以外にも学童保育所を訪問して開催する「出前イベント」を行っており、これまでに50回以上開催、約2,500人が参加しています。
2023年度の「ブラザーアースキッズアカデミー」
2023年度は、同年5月に新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に位置付けられたことから、子どもたちにとって行動制限のない夏休みとなったため、2023年7月26日から8月25日の期間におけるすべてのイベントを対面で実施しました。前年にも実施した出前イベントに加えて、4年ぶりにブラザーミュージアムでもイベントを実施し、合わせて14回開催、約500人の子どもたちが参加しました。
ブラザーミュージアムでのイベントでは、以前から行ってきた「絶滅危惧動物図鑑」の制作などに加え、「環境宣言ポスター」づくりや「ブラザークロスワードクイズ」など、対面によるイベントならではの新たなプログラムを実施しました。
「環境宣言ポスター」づくりは、子どもたちが、節電・節水・リサイクル・フードロス削減の4つから自分ができると思った取り組みを一つ選び、ブラザーのスキャンカット*でつくられたそれぞれのアイコンを木のイラストに貼りつけ「環境宣言の木」を完成させるものです。完成したポスターは、その宣言を忘れないよう学童保育所で掲示するため、持ち帰っていただきました。
「ブラザークロスワードクイズ」は、ブラザーの歴史や製品などについて楽しみながら学べるように、ブラザーミュージアム内を探索しながら、クロスワードクイズを完成させる仕組みとなっています。これらのプログラムを通じて子どもたちは、地球環境について学ぶだけではなく、楽しい夏休みの思い出もつくることができました。
参加した子どもたちからは「これから節電、フードロス削減、リサイクル、すべて心掛けようと思った」という感想があったほか、学童保育所の指導員からは「子どもたちも真剣に取り組んでおり、自分自身も学ぶことが多く勉強になった」「地球温暖化や絶滅危惧種について、子どもたちと学ぶ機会をつくることができて良かった」という声が寄せられました。
これらの活動などが評価され、ブラザー工業は、生物多様性保全に関して優れた取り組みを行っている企業として愛知県から「あいち生物多様性優良認証企業」に認定されています。
ブラザー工業はこれからも、持続可能な社会の実現に向け、地域への教育支援活動や、地球環境保全につながる取り組みを行うことで、SDGs4「質の高い教育をみんなに」、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」、SDGs15「陸の豊かさも守ろう」に貢献していきます。
- ハサミやカッターを使わずに、タッチパネルの操作で紙や布、薄いプラスチックシートやステッカーなどをカットできる製品のこと
中国で、経済的に恵まれない農村の女性を支援
雲南省の女性たちに、ミシンを寄贈
中国の販売拠点である兄弟(中国)商業有限公司(以下、BCN)は、「中国社会の発展、人々の豊かな生活の実現に貢献する」をミッションとして掲げており、中国・雲南省で経済的に恵まれない女性を支援する活動を行っています。
中国では、著しい経済成長を遂げている一方で、都市部と農村部における格差が生じており、中国の最南西部に位置する雲南省でも、就職難の女性がいます。女性たちは、雲南省の伝統文化で、中国の無形文化遺産にも登録されている手縫いの刺しゅうなどの仕事はあるものの、十分な収入を得るためには出稼ぎをしなければならず、その結果、家族や子どもたちと離れて暮らさなければなりません。このようにして親の出稼ぎによって農村部に残された子どもたちは、「留守児童」と呼ばれ、中国特有の社会問題となっています。そこでBCNでは、2022年度から2023年度にかけて、ミシン26台を寄贈するとともに、使用方法に関する研修を行いました。これらの活動によって、女性たちは、雲南省伝統の刺しゅうを用いたかばんや財布などの工芸品を製作することが可能になり、より多くの収入が得られるようになりました。さらに、地元で働き続けることができるようになったことから、家族や子どもたちと一緒に暮らすことができるようになり、「留守児童」問題の改善をもたらしました。
ブラザーグループでは、ブラザーグループビジョン「At your side2030」で「あり続けたい姿」として掲げる「社会の発展と地球の未来に貢献する」を実現するために、5つのマテリアリティを特定しています。そのうちの一つである「人々の価値創出の支援」に向けて、BCNは今後も、事業を通じた社会課題の解決に取り組んでいきます。