2026.7.30
FRUITS ZIPPERを彩る「NEW KAWAII」衣装制作への挑戦
クリエイターのこだわりに、ブラザーの“技術”と“人”が応えた。
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- 刺しゅう×デジタル印刷で新たな表現を可能にするDTE(Direct to Embroidery)技術
- クリエイターのこだわりに応えるために、技術だけでなく開発者自身も衣装制作に関わる
- 革新的な技術と人の熱意が組み合わさることで、新しい価値が生まれる
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- ショコラ
- 「尾州ロリィタ」デザイナー
- 尾州毛織物の生産地である愛知県一宮市出身、在住。ロリィタ愛好家で、地元の生地のすばらしさに魅了され、一宮駅前の本町商店街にてロリィタ体験サロンとファッションブランド「尾州ロリィタ」を運営している。常に新しいアイデアと持ち前の行動力で“ものづくり”のすばらしさを“かわいい♡”で広める活動を行う。
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- 渡邊 大貴
- ブラザー工業株式会社 インダストリアル・プリンティング事業
産業用プリンター事業推進部 - 住宅設備メーカーでの営業職を経験後、ブラザー工業に入社。現在は産業用プリンターの中国・アジア地域の営業推進担当として、販売会社の活動支援に従事。中国市場からの要望を受けてはじまったDTEプロジェクトでは企画の立ち上げメンバーとして参加。
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- 風間 亮汰
- ブラザー工業株式会社 インダストリアル・プリンティング事業 産業用プリンター開発部
- 入社以来、ラベルプリンターやカンバッジメイカー、DTEの開発に携わり、お客様の課題解決から新規製品の開発まで、幅広い業務を経験。現在はソリューション開発に従事するとともに、DTEのプロジェクトリーダーとして技術支援を担い、新たな機種の開発を推進している。
ロリィタブランド「尾州ロリィタ」を展開するファッションデザイナーのショコラさんに、女性アイドルグループ「FRUITS ZIPPER」が大規模ファッションショーに出演する際の衣装制作の依頼が舞い込みます。国内外で人気急上昇中の彼女たちを魅力的に見せるためにはどうすべきか。そこで生まれた「メンバーの顔を刺しゅうする」アイデア――。その難しいチャレンジの実現を支えたのが、ブラザーの刺しゅうデジタル印刷技術「DTE(Direct to Embroidery)」でした。衣装制作の現場には、DTEの企画や開発に携わったブラザー従業員2名も参加。ひとりのクリエイターの発想とこだわりが、どのように形になっていったのか。その舞台裏を聞きました。
1.ブラザーとの出会い、なぜ「DTE」だったのか
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- ショコラさん:
- 「尾州ロリィタ」という、地元尾州の生地を使ったロリィタ服のブランドを立ち上げて活動しています。尾州織物は、愛知県一宮市を中心とした地域でつくられる毛織物で、海外のトップブランドからも評価されている高品質な素材です。
今回のファッションショーで披露する衣装制作の話をいただいて、最初に考えたのはFRUITS ZIPPERのファンの方々のことでした。彼女たちの登場を楽しみに待っているファンを、心から喜ばせるものにしたい――。その一心でさまざまなアイデアを検討して、最終的にご本人たちの似顔絵を衣装に取り入れることにしたんです。ご本人たちがランウェイを歩いている途中、ファンがご本人の背中しか見えていない時間も多いので、その時に似顔絵が見えると楽しいかなと・・・。
しかし、実現への道のりはかなり厳しいものでした。似顔絵は背中のリボンの上に載せることにしたのですが、できれば衣装へのプリントではなく、特別感が出るように“刺しゅう”で表現してみたいと考えました。ところが、高精度な似顔絵を刺しゅうしようとすると、かなり難易度が高く、さらにファッションショーまで時間も限られていて、衣装(ドレス)本体の制作もあるので、どうしようと・・・。そこで、以前から少しだけお付き合いがあったブラザーさんに、藁にもすがる思いでコンタクトを取ってみました。
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- 渡邊さん:
- ショコラさんから相談を受けたブラザーの従業員がたまたま、当時開発中だったDTE技術であれば役に立てるかもしれないと、ショコラさんと私たちをつないでくれたんです。
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- 風間さん:
- DTEは、Tシャツなどに直接プリントができる「ガーメントプリンター」の可能性を広げるために開発された技術です。通常の刺しゅうは必要な色の糸を1本ずつ順番に刺しゅうして完成させるため、刺しゅうでしか出せない風合い、表現が可能です。一方で、DTEによる刺しゅうは、まず刺しゅう機を使って、白い糸だけで刺しゅうを施してからDTE機能が搭載されたガーメントプリンターにセットし、インクで印刷(着色)することができます。そのため、グラデーションなどの繊細な表現ができることに加え、通常の刺しゅうでは色数の分だけ発生する「糸切り」や「糸替え」など大変手間のかかる工程を最小限に抑えることができます。
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- 渡邊さん:
- 刺しゅう機とプリンターの両方を手がけているブラザーの強みを活かして、刺しゅうの上に印刷をすることで、お客様側での工数を削減しながら幅広い表現が可能となります。
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- ショコラさん:
- DTEを提案してもらったとき、「これならアイデア通りの衣装がつくれるかも」と思ってワクワクしました。おふたりともすごく協力的で。どうしてここまでしてくださるんだろうと不思議に思ったくらいです。
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- 渡邊さん:
- クリエイターの方の生の声を聞きながらものづくりに取り組める機会はすごく貴重ですし、それに、DTEのことを多くの方に知っていただく機会にもなれば、という思いもありました。
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- 風間さん:
- まずはロリィタ服について知ることが必要だと思い、ショコラさんにお会いしていろいろ伺いました。
ロリィタについて教えていただく過程で、ショコラさんの、衣装をつくってくれる職人さんをはじめ関わる方全員にリスペクトを持って接するところに惹かれて、なんとか期待に応えたいという気持ちになりましたね。
2.衣装制作のこだわりと試行錯誤
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- ショコラさん:
- 私にとって一番楽しい瞬間は、デザインした服が工場から届けられたときなんです。糸や生地をつくる人、それらを染める人、縫製、パターンをつくる人まで、生産に関わる職人さんとは、直接会ってコミュニケーションしています。ですから彼らが大切につくってくれた服を見る瞬間は、本当にワクワクして…。毎回、「こんな綺麗なものがつくれるんだ」という喜びで震えています!
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- 風間さん:
- ショコラさんは、“つくり手のこだわりが結集したもの”が好きで、尾州ロリィタでもそこにこだわりを持っているということを何度も情熱的に語ってくださいました。そんなショコラさんの熱意に惹かれて、多くの職人さんたちが「自分もそのものづくりに携わりたい」と集まるのだと思います。
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- 渡邊さん:
- 最初にお会いした時に、ショコラさんがデザインした衣装をいろいろ見せていただいたんですが、そのなかには、職人による手仕事で刺しゅうが施されていた衣装もあり、あらためて刺しゅうの奥深さや魅力を感じました。
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- 風間さん:
- 刺しゅうの縫い目を見ながら、DTEでどんな工夫ができるかという話で盛り上がったことを覚えています。ショコラさんは衣装の見た目だけでなく、それがどうつくられているかまで本当によく見ていらっしゃるんだなと感じました。
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- ショコラさん:
- そうですね。普通のデザイナーは服のディテールを見ることが多いと思うのですが、私は、その服が「どのような技術や機械でつくられているのか」にもすごく興味があって、工場に行くと、いろいろ見てしまって帰るのが遅くなることもあります(笑)。だからDTEを紹介してもらった時も、すごく興味を持ったんです。
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- 渡邊さん:
- 今回の制作に携わって、普段の業務では関わらない分野からたくさんのことを学べました。見せていただいた衣装のなかには、老舗の刺しゅう屋さんが手がけたものもあり、その表現を参考にしながら機械でも手作業のように見える工夫を考えたりしました。試作品をつくるために何度もやりなおしたのも良い思い出です(笑)。
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- ショコラさん:
- その件はすみませんでした(笑)。おふたりとも他の業務があるなかで、このプロジェクトに熱意を持って取り組んでくださっていることが伝わってきました。ブラザーさんも会社としてそれを応援してくれている雰囲気で、とても寛容なんだなと(笑)。私も尾州ロリィタを立ち上げる前は会社員をしていたので、なおさらそのすごさがわかりました。私がつくりたかったものを、おふたりが細部までこだわって形にしてくださいました。
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- 渡邊さん:
- つくり手や衣装を着る本人、そのファンの方に喜んでもらえるものを目指して自分たちなりに表現を工夫しました。刺しゅうとプリントを組み合わせることで柔らかく自然に表現できるのがDTEの強みだと思っています。
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- 風間さん:
- 複数の糸を使って刺しゅうする場合は、「それぞれの糸をどの順番で使うか」を検討する必要があるんですが、DTEは白糸1色だけで刺しゅうができるので、そのような検討をしなくてもデザイン通りの刺しゅうができあがるんです。
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- ショコラさん:
- スピードも速いのに、それでいて完成度も抜群に高いんです。普通、刺しゅうは、生地との相性などさまざまな要因で少し糸がはみ出たりするんですが、今回DTEでつくった刺しゅうは、まるで老舗の職人さんが手がけたように、まったくはみ出しがなくてすばらしい仕上がりでした。
制作終盤は本当に全力疾走という感じだったんですが、おふたりが本気で取り組んでくださって、心から感謝しています。
3.衣装完成後の反響と、DTE技術の今後の展望
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- ショコラさん:
- 衣装が仕上がった後、大型ファッションショーに3人で行ってFRUITS ZIPPERさんのステージを見ました。DTEと出会っていなければ、実現できなかったかもしれない刺しゅうが施された衣装が目の前で披露されている――。やり切ったなという気持ちで胸がいっぱいになりました。
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- 渡邊さん:
- ブラザーはアパレル業界の中で、“服をつくる機械”をつくっている会社です。あくまで主役はクリエイターの方やできあがった作品、そしてそれを着てくださる方々です。私たちの製品の価値は、つくり手や着てくださる方たちに喜んでもらって初めて生まれるものだと思っています。
今回、こだわりが詰まった衣装を着て颯爽とランウェイを歩くアイドルたち、それを見つめるファンの方々、そしてつくり手のショコラさん――。皆さんが喜んでいる瞬間に立ち会えたことは、かけがえのない経験です。
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- 風間さん:
- こんな大舞台でDTEの成果をお披露目できるなんて考えていませんでした。ユーザーやお客様の声をダイレクトに感じられたことは、開発者としてとても嬉しかったです。
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- ショコラさん:
- ショーに先立つフィッティングのときにも、メンバーから「超かわいい、最高!」と言っていただけたのも嬉しかったですね。
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- 渡邊さん:
- その時、私は他のメンバーの刺しゅうを必死につくっていたので、その言葉を直接聞けなかったのですが(笑)。
その後、DTEの開発に協力していただいた他部署の方々に、衣装制作の件も含めてお礼のメールを送ったところ、たくさんの人が喜んでくれて。DTEはできたばかりなので、まだまだこれからですが、まずは1つ、成果を生み出すことができたのかなと感じています。
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- 風間さん:
- 社内の反応はすごく大きかったですね。同じ部署の人から「あ、FRUITS ZIPPERの人だ」と言われたり(笑)。
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- 渡邊さん:
- 会場は撮影OKだったので、観客の方々がSNSに映像を上げてくださっていました。「刺しゅうがかわいい」、「またふるっぱーに(尾州ロリィタを)着てほしい」など、嬉しいコメントがたくさんあって――。ファンの方々にショコラさんの意図がきちんと伝わっていましたね。
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- 風間さん:
- DTEの強みは、刺しゅうならではの質感と、印刷によるグラデーションや精細な表現を組み合わせられる点です。これまで手が届かなかった新しい表現を実現できる技術だと思っていますので、今後はその可能性をさらに広げて、お客様の細かなニーズにも応えられるようにしていきたいです。
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- ショコラさん:
- 今のアパレル業界は、少子化の影響で後継者不足が進んで職人の方々が培ってきた技術が失われつつあります。もちろん、ゼロから1を生み出す職人の技術をどう残していくかも重要ですが、これからはそれを補う機械の役割がますます重要になっていくのかなと。
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- 風間さん:
- そうですね。失われていく職人の技術を受け継ぐ、あるいは補完する役割として、ブラザーの製品がクリエイターやアパレル事業者の方の役に立てるといいなと思います。
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- ショコラさん:
- 今回、風間さんと渡邊さんがいてくださったからこそ、衣装を完成できたと思っています。機械と人が支え合い、共存していくことが大切なんだと思います。これからもブラザーには、かけがえのない“人”の技術を100年先でも再現できるような機械をつくっていただきたいと期待しています。
- ※本記事に掲載しているFRUITS ZIPPERの情報や衣装写真等は、関係者の許可を得て掲載しています。
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