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2026.6.30

プリンティングビジネスの価値ある取り組みをお客様に「伝える」仕掛けづくり。サステナビリティ専門部隊のPR戦略

Pick Up !
  • 社内で情報が埋もれがちなサステナビリティ活動の価値を、独自の強みとして社内外へ積極的に発信
  • 社会要請に応えるだけではなく「お客様にとっての価値」を紹介
  • サステナビリティ活動を、環境対応と併せてビジネスチャンスの拡大にもつなげていく
目次
  1. 1.その価値、見逃されていませんか?
  2. 2.「実はすごい」を、「お客様にとっての価値」として伝える
  3. 3.環境対応を事業成長にもつなげる
  • 阿部 靖威 プロフィール写真
    阿部 靖威
    プリンティング・アンド・ソリューションズ事業 第1事業推進部 グループ・マネジャー
    入社後、欧米市場向けレーザープリンターの営業企画業務に従事した後、アメリカの販売会社に出向し、マーケティング、損益管理を担当。帰国後はサブスクリプション・消耗品自動補充サービスの立ち上げを経て、現在は事業に貢献するサステナビリティ活動の推進に挑んでいる。
  • 冨田 茉実 プロフィール写真
    冨田 茉実
    プリンティング・アンド・ソリューションズ事業 第1事業推進部
    人事部、プリンティング製品の営業企画部門を経て、サステナビリティ推進グループへ異動。現在は、サステナビリティに関する社内外へのグローバルコミュニケーション担当として、環境技術を紹介する動画コンテンツの制作や、新製品の環境性能を販売会社へ伝えるトレーニングの企画・運営、循環型ビジネスの企画などに従事している。
  • 森田 哲矢 プロフィール写真
    森田 哲矢
    プリンティング・アンド・ソリューションズ事業 第1事業推進部
    入社以来レーザープリンターの製品設計に従事し、その後サステナビリティ推進グループに異動。現在は、各国の環境法規制対応に加え、P&S事業のCO2排出量など数値的な環境目標の管理を担当。また、サステナビリティ情報の発信においては、元製品設計者としての知見を活かし、とくに製品のCO2削減量や省電力性などの性能に関して開発部門と調整する役割を担っている。

プリンターや複合機を手がけるブラザーのP&S(プリンティング・アンド・ソリューションズ)事業には、ある“専門部隊”が存在します。それは、同事業のサステナビリティに関わる取り組みを横断的に担う「サステナビリティ推進グループ(以下、「推進グループ」)」です。
推進グループの役割は、循環型ビジネスの企画から法規制対応まで、さまざまなサステナビリティ活動を推進すること。その一つに、社内外へのコミュニケーション推進があります。社内のさまざまな関連部門と連携しながら取り組みの価値を見つけ出し、それを独自の強みとして社内外へ発信していく活動です。
「環境への貢献」という社会からの要請に応えるだけでなく、ブラザーの取り組みがお客様にとってどのような価値があるのかをわかりやすくお伝えすること、そしてブラザーの製品・サービスをお客様に積極的に選んでいただけるようにする。その目標に向かって日々奮闘する推進グループの、これまでの取り組みや試行錯誤についてメンバーに聞きました。

1.その価値、見逃されていませんか?

なぜP&S事業内に、サステナビリティの専門部隊があるのか。その背景の1つは、同事業部が直面する市場環境の変化にありました。推進グループでグループ・マネジャーを務める阿部さんは、設立の背景を次のように語ります。

阿部さん
欧州を中心に、製品選択の際にサステナビリティ(地球環境・社会・企業の持続可能性)を重視するお客様は年々増えていて、今やその対応力が企業の競争力を左右する時代となっています。とくにP&S事業の製品は、社会やお客様からの要件が厳しく、「環境に配慮した工夫が施された製品」であることが、入札案件の必須条件になることも珍しくありません。
阿部さんのインタビュー写真

阿部さんはこうした状況を踏まえ、サステナビリティを単なるコストや義務と捉えるのではなく、新たな案件獲得や市場開拓に欠かせない取り組みとして位置づけます。そして中長期的な視点で能動的に対応するために、事業部内の専任組織を牽引することを自ら決意したのです。
約2年前に推進グループへ異動した冨田さんは、当時の課題をこう振り返ります。

冨田さん
ブラザーにとって環境に配慮したものづくりは、決して最近始まったことではありません。しかし、これまではそれを「お客様にとっての価値」として積極的に発信することはあまりできていませんでした。その結果、社内外にその製品やサービスにおけるサステナビリティ面の価値が正しく伝わっていないケースが多々ありました。
冨田さんのインタビュー写真

こうして2024年、P&S事業内に「サステナビリティ推進グループ」が誕生。現在は、製品の環境性能を第三者が認証する環境ラベルの取得や法規制対応などを担うチームと、循環型ビジネスの実現に向けた施策および社内外へのコミュニケーションを担うチームに分かれ、活動を展開しています。
元レーザープリンターの製品設計者であり、現在は排出量算定業務などに携わる森田さんは、設計現場の事情についてこう語ります。

森田さん
開発の現場では、目の前の仕様を実現することに全力を注ぐため、自分たちの取り組みがお客様や社会にもたらす価値について意識する余裕はなかなかありません。社外から評価されて初めて「これって、すごいことなんだ」と驚くことも多いんです。
森田さんのインタビュー写真

こうした見えにくい価値を拾い上げるためにグループが徹底しているのが「足を使った情報収集」です。

森田さん
開発部門に直接足を運んで話を聞くことを、常に心がけています。開発者は技術に強い思い入れを持っているため、対話を重ねることで、当初の想定を上回る深い情報を引き出せることが少なくありません。そのなかから、数字や裏付けといったPRに不可欠な要素を的確に抽出するにあたっては、設計者時代に培った経験が役立っていると感じています。
冨田さん
「実は業界初の技術」「この工夫がCO2削減にも大きく貢献している」といった事実を、そうした対話のなかで初めて知ることも多いです。これまでフォーカスしきれていなかったもどかしさや悔しさを感じる一方で、だからこそ自分たちがしっかり伝えていかなければならないという想いが強まりました。
阿部さん
社内の展示会や技術発表の場にも積極的に足を運び、アンテナを張り続けています。一見目立たない技術的な発表であっても、サステナビリティの観点から見れば強力なアピール材料になることがあります。社内に埋もれている“宝”を発掘し、その価値についてお客様をはじめとしたステークホルダーに広く伝える。それが、私たちの役割であると考えています。

2.「実はすごい」を、「お客様にとっての価値」として伝える

こうした取り組みのなかで、とくに反響が大きかったのが「小型化・軽量化と環境負荷軽減を実現したパルプモールド緩衝材」と「インクカートリッジの再生技術」です。
「発泡スチロールに代わる環境配慮型の緩衝材パルプモールド」は、従来形状と比べてCO2排出量を33%削減しているだけではなく、お客様にとっては梱包材の容量が小さくなることで廃棄の際の手間を省くことができるなど、大きなメリットがあります。しかしながら、製品として使われ続けるものではない梱包材であることから、その価値が見過ごされやすく、それをどうPRしていくかという課題感がありました。
そこで推進グループは、ブラザーのパルプモールドがパッケージのコンテストで賞を受賞したことを機に、技術者と対話しながらPR映像を制作。従来は世界各地の販売会社がそれぞれ独自にPRを行うことが多かったなか、社内の広報部門と連携しながらグローバルでの発信を行い、社内外のステークホルダーにアピールしました。

同じく、環境配慮の観点からP&S事業の大きな強みとなっている「カートリッジの再生技術」も、推進グループがPRに注力している事例です。
ブラザーグループでは約20年にわたりレーザープリンターの消耗品であるトナーカートリッジの再生に取り組み、グループ全体で累計4,000万個以上を再生(2025年3月末時点)。再生トナーとして世界で初めてドイツの環境ラベル「ブルーエンジェル認証」も取得しています。さらに2024年には、英国工場でインクカートリッジの再生にも着手するなど、プリンター業界においてカートリッジの再生では先行しています。
しかし、どれほど優れた取り組みであっても、お客様に情報が届かなければ意味がありません。さらに、カートリッジの再生は、お客様に使用済みのカートリッジを返却していただくことから始まるため、まずはお客様に活動を知っていただき、ブラザーの取り組みについて理解してもらう必要がありました。そこで推進グループは、このインクカートリッジ再生の取り組みをはじめた際にグローバルに発信するため、現地販売会社と連携してPR映像を制作しました。

冨田さん
PRコンテンツを活用した販売会社からは、「『業界トップクラスの数値』といった表現がお客様への提案に使いやすい」という声や、「目標値を実現するまでの開発ストーリーは今まで知らなかった」「PR動画を見て初めてその価値に気づいた」という反応も多く、大きな手応えを感じています。

一方で、社外に加えて社内に向けた発信も重視し、サステナビリティ活動の最新トピックや事例を継続的に共有しています。そうした社内向け発信の場の1つが、阿部さんの発案で生まれた「サステナEXPO」です。

阿部さん
年1回、社内向けにP&S事業の製品におけるサステナビリティに関する最新の取り組みや制作コンテンツを紹介する「サステナEXPO」というイベントを開催しています。他事業部の方々にとって「(P&Sでは)こんなことをやっていたのか」という気づきの場となるだけでなく、来場した開発者から「実はこういう取り組みもあって…」と次なるネタがもたらされることもあり、お客様への新たな価値提供につながる場にもなっています。
サステナEXPOの実施風景
冨田さん
PRの工夫で何より気を配る必要があるのは、専門的な内容を、いかにわかりやすく、興味を持ってもらえる形で伝えるかです。たとえば発泡スチロールの削減量をオリンピックプール何杯分という形で表現したり、総合デザイン部と協力して制作した動画を新製品トレーニングに活用したりと、環境配慮の取り組みを「お客様にとっての価値」として実感していただける伝え方を、つねに意識しています。
森田さん
「小型で環境に優しい」「省電力で環境に優しい」だけではなく、「小型化によってプラスチック使用量がこれだけ削減された」「省電力によって稼働時のCO2排出量がこれだけ減った」とできるだけ具体的に示すようにしています。それが説得力につながると同時に、グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)にならないためにも大切になります。

3.環境対応を事業成長にもつなげる

推進グループが発足して約2年。その地道な活動は今、具体的な成果として表れ始めています。
たとえば、オーストラリアの大手量販店からは、パルプモールド緩衝材の取り組みが評価され、サステナブル貢献企業として表彰を受けました。また、米国の市場調査会社・IDCによるプリンター再生に関するレポートでは、ブラザーがリーダーに選出されました。このような社外からの客観的な評価も獲得できるようになっています。

冨田さん
こうした対外的な評価は、お客様からの信頼や期待につながっています。また、社内の取り組みをさらに前に進めるための原動力にもなっています。
たとえば、アワードの獲得やメディア掲載が増えるにつれて、開発側から「うちにもこういう技術があるのだけど残念ながらあまり知られていない」と相談を受ける機会が増えてきました。開発側から自発的に提案しやすいコミュニケーションの土台が、少しずつできあがってきた実感があります。

社外への発信がお客様にブラザーの取り組みを認識してもらうことにつながる。そしてアワード評価にもつながる、その評価が社内のモチベーションを高め、新たな取り組みと発信を生む――。そんな好循環が、少しずつ回り始めています。そして、このサイクルを根底で後押ししているのが、「環境価値とビジネス価値を両立させる」という考え方です。

阿部さん
まだ一部ではありますが、欧州では「再生トナーを供給できること」が条件となる入札案件で受注に至った実例も出ていて、環境対応やそのPRが単なるコストではなく、ビジネスへ確かに貢献するものであることが証明されつつあります。
冨田さん
CO2排出削減などの取り組みは環境への配慮だけではなく、お客様の課題解決や利便性向上につながる。そうなってこそ、サステナビリティは本当に社会に浸透していくと思います。そして、それを両立させるという厳しい「制約」があるからこそ、イノベーションが生まれるのではないでしょうか。
森田さん
そうですね。設計者としては、厳しい制約があったほうが燃えるところはありますね。
阿部さん・冨田さん・森田さんのインタビュー写真

ブラザー独自の取り組みを、お客様や社会にお届けし、その評価を社内へと還流させる。「環境対応を事業成長にもつなげることで、真のサステナビリティを実現する」という推進グループの奮闘は、これからも続いていきます。

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