日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第15号 麦わら帽子製造用環縫ミシン
1920年代初頭、日本のミシン市場はシンガー社一色の独占的な状態であった。そのような時代に、ブラザーエ業株式会社の創業者安井兄弟は、1928(昭和3)年麦わら帽子製造用環縫ミシン「昭三式環縫ミシン」を開発、販売した。この開発にあたり、安井兄弟はミシン製造に必要な技術である機械加エ技術と熱処理技術の開発に着手した。
特に耐磨耗性と耐衝撃性を必要とするミシン部品には材料に表面硬度と靭性を持たせる表面焼入れは不可欠な技術であったが、当時の日本ではこの技術が一般的には普及しておらず、試行錯誤の上、浸炭焼入れ技術を確立した。この技術をもとに、ドイツ製が主流だった麦わら帽子製造用環縫ミシンの国産化に着手、外国製品に負けない耐久性を持った製品として開発されたのが「昭三式環縫ミシン」である。当初の売れ行きは必ずしも良好でなかったが、その耐久性によりユーザーから高い評価を得た。
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